《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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神野紗希『句集 光まみれの蜂』(角川書店)より
2023.09.18
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2012年
第1句集
水澄むや宇宙の底にいる私
目を閉じてまつげの冷たさに気づく
大木とみれば抱きつく夏帽子
帽子掛け虫籠吊ってありにけり
雷や波打際の砂の城
ホットココア星を見ている人へ運ぶ
これほどの田に白鷺の一羽きり
雲の峰死にたるときの本の嵩
いなびかり象は象舎のほか知らず
平面に立体を描く寒さかな
雲の峯よりも遠くや犀の国
桐一葉黒き眼の黒兎
樹の刺繍学芸員の膝掛けに
どこへ隠そうクリスマスプレゼント
キリンの舌錻力(ブリキ)色なる残暑かな
食べて寝ていつか死ぬ象冬青空
現代詩・紫雲英・眩暈・原子力
花びらは光の裔や散りいそぐ
よじれた金網夏野への入口
紫陽花を伐る刃に紫陽花が映る
乗り出して飛魚を指さしている
校舎光るプールに落ちてゆくときに
Tシャツが濡れて水着が透けている
スカートの一人遅れて夏野行く
線香花火左手は膝抱いて