《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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原雅子『句集 束の間』(角川書店)より
2023.10.16
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2011年
第2句集
「梟」同人 「扉」句会代表
海晴れて鯖に重みの増すころぞ
ゴムまりのぺこんと春の土の上
剪定に日差しちくちくしてきたる
長靴のぶかぶかと来る桃の花
Gパンのごはごは乾き登山宿
秋風やでろりと赤き木偶の裾
潮風をよろこぶ仔馬生まれけり
とろ箱を椅子に小舟に夏休み
簾して奥の赤子のしづかさよ
肉挽機から暗紅の鴨の肉
満点に星の貼りつく寒さかな
山開く祝詞さなかを棒の雨
降りながら空の明るむ蟻地獄
とある日は廃墟の景をかひやぐら
松の芯きちんきちんと朝が来て
筒鳥のぽんぽん鳴けりぽんと止む
薔薇園に薔薇は疲れてゐたるなり
このごろの涼しさに置く眼鏡かな
吊橋のぎしりぎしりと雪解風
簗掛けのさなかも水の走りけり
またたいてまたひとつづつ凍る星
元日や見馴れし壁をうち眺め
海開きつめたき水をよろこべり
虹が消えるよ話すならささやいて
松よりも高く日浴びて松手入
鶴はもう来たかと訊けばこつくりと
うつむいてゐる子に光り龍の玉
神苑に寒の水汲むポリタンク
牛蛙闇がぶよぶよしてきたる
声のして達磨の中の達磨売
吉祥天すこし吊り目の涼しさよ
露草に露の干ぬ間の思ひごと