《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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国吉玲子『句集 秋燕』(ふらんす堂)より
2023.10.30
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2010年。
第一句集
「泉」会員
蓮根掘り雲を残して帰りけり
白萩に触れたる傘を畳みけり
残寒の干潟ぶつぶつしてゐたり
駆け抜ける毛虫の落ちて来ぬうちに
瓢箪の括れはじめし雫かな
潦跳んできのこの国に入る
山羊の腹みな大きくて冬日和
くれなゐの一筋走る冬の斧
小鳥来る置きつぱなしの乗馬帽
ひと弾みして新藁となりにけり
押し合つて口の裂けたる燕の子
括られて尻美しき冬菜かな
鳶の胸鷗の胸や寒日和
鎌倉の松の匂へる弓始
味噌玉の湯気をさまりし鳥の恋
母と子に浜昼顔の刻流れ
白鳥の水のそはそはしてきたる
龍の玉むかしむかしを聞いてゐる
鋸に父の指跡小鳥来る
龍の玉ばかり探して歩きゐる
一つづつ外す鵜縄や居待月