《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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明石晃一『句集 鎌倉」(文學の森)より
2023.11.28
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平成24
「白桃」同人
第1句集
散らさずに登るすべなし萩の磴
落椿その上にまた落椿
淡きとも濃きともうつし世の桜
雛飾る部屋あたためてをりしかな
父の日や飴玉に口なぐさめて
血の薄くなりたるおもひ曼珠沙華
正座せり飾りをはりし雛の前
秋冷の潮鳴りを聴く力石
大空のいちばん底の袋掛
冬満月銀杏は白き木なりけり
秋簾子が来て巻いてゆきにけり
飛花落花峠の風もさくら色
時雨来て声高となる朝の市
暗闇をほぐして辛夷ひらきけり
金亀虫押さへし指を押しかへす
大欅うしろに控ふ御慶かな
子ら散つて色ちらばつて冬ぬくし
黒豆に艶でて嵯峨野しぐれかな
寒卵ゆつくり殻を抜けゆきし
ふつくらと駆込み寺の落葉かな
谷(やつ)ひそか谷よりひそか冬ざぐら
初蝶に大きすぎたる淡海あり
点るたび透けて見えたる螢籠
白壁と懇ろになる次郎柿
沖淋し陸なほさびし鳥ぐもり
負け独楽の弾き出されてなほ回る
水甕に水あふれゐし天の川