《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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豊田都峰『句集 草の唄』(東京四季出版)より
2023.12.28
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2007年
「京鹿子」主宰
第7句集
夏料理まづ風といふ一品を
満月の一願のごとかかりけり
木洩れ日のゆらぎに秋のひそみゐて
道しるべどこを指しても露ばかり
枯れきれば今日も日なたとなる中洲
遠回りして野の梅のまだ固し
いしだたみ髄まで濡れて春めけり
信州の空ことごとく青りんご
鉾の灯のともりてなづむ山となる
鉾すすむその高さにて厄はらひ
手のなりに風をしづめのをどりなる
あまさずに湖国を入れて秋天下
鳥ぐもり湖国はけふも遠目ぐせ
チューリップあますことなし日の乾杯
街路樹のかげしろがねに薄暑なる
薫風は大弧となりてびわ湖越ゆ
野となれる官衙址蝶をひとつ生む
ねむ咲くや夢に入りくる水の音
峠路は雲もろともに飲む麦茶