《古書・古本の出張買取》 京都・全適堂 の日記
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千鳥由貴『句集 巣立鳥』(ふらんす堂)より
2024.01.30
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2023年
「香羽」同人
第1句集
身ごもれることなど知らず磯遊
小説にならぬ人生苔の花
歳月はここにも流れ蝉の穴
風鈴をすべて鳴らしてひとつ買ふ
木には木の言葉のありて木の実降る
育児書に引く傍線や明易し
夢でなほ吾子にかしづく良夜かな
去り際に祈りの言葉クリスマス
亀鳴くや勾玉に目のごとき孔
みづからの呼ぶ風に散り山桜
筍に長幼の序のごときもの
食みをれば鳥のこころにさくらんぼ
散りぢりの蟷螂の子のそれつきり
飾り切りされて胡瓜が皿の隅
厩舎よりのぞく鼻すぢ初紅葉
全天を引き絞りゐる寒オリオン
伴奏の教師を包む卒業歌
みづうみを賽の転がる絵双六
鉄塔の刺さつてゐたる冬の空