《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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山根啓作『句集 啓明』(朱雀俳句会)より
2024.03.01
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平成24
「朱雀」同人
第1句集
右よしの左いせぢや風薫る
村小町踊りの背に団扇差し
掌の蛍に温みあるごとく
落日のさらけ出したる大枯野
ポケットの中に鳴り出す初電話
長老の一番乗りの寒稽古
牛蛙鳴き出し句座の盛り上がる
熱帯夜柱で冷やす足の裏
雲の峰龍馬が眠る東山
着ぶくれを叩きて探すドアの鍵
悴む手摺りてはじまる珠算塾
風花や花一つなき銀閣寺
水脈を引くまでは目立たず鳰
桜井線土筆の束の忘れもの
春昼や水車三拍子にて回る
キャンパスに零銭一機青嵐
稲架襖一枚隔て能登の海
緑蔭に机並べて献血車
羊蹄草(ぎしぎし)や嘗てにはとり放し飼
一本の蝋燭涼し伎芸天
山間に開けて蕎麦の花浄土
黄落やサナトリウムに赤ポスト
布団打ち古りたる夢を叩き出す
乱れなきオール八本風光る
手書きにて「ピアノ教室」薔薇の門
磯遊び潮の際まで乳母車
杖二本麒麟のごとく青き踏む