《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
-
片桐和子『句集 雪韻』(遊牧社)より
2024.03.10
-
1996年
「菜の花」同人
第1句集
ドア細く開けて雪ん子入れてやる
軒先につららが太る喪の家族
一戸づつ出てはかげろふ郵便夫
夕日射すすでに冷たき松の幹
夕立に打たれしものを全て脱ぐ
月が出るつらら太れるだけ太り
墓の影靴に届きてあたたかし
受験子に大きな靴の友来たる
月の出に間のあり瓜を揉んでをり
踏石のどこも濡らさず蛇渉る
滝壷にときどき差して鳶の影
戸口まで雪押し寄する夫の留守
奥飛騨へ電話つながる夜の秋
雪走る店頭に盛る青みかん
着膨れてをり野良猫に住みつかれ
独酌の夫置き花火見に出づる
軒潜るときも水平ぎんやんま
オートバイ銀杏落葉を湧かせ発つ
根雪まだ解けず逢ひたき人二三
ぎつしりと墓石に映り蝉鳴く木
灯を消して厨休ます良夜かな
秋燕の落とせしものが地に動く