《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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犬飼孝昌『句集 土』(菜の花会)より
2024.03.18
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平成4
「菜の花」同人
第1句集
着膨れて肩で押すドアすぐしまる
村雪解ビニールハウスきらめける
月の夜の稲穂一粒毎見ゆる
悴む手ほぐし子の嘘聞きてをり
春愁の色鉛筆を鋭く削る
飛んでゐる限り華麗に秋揚羽
木の瘤にまろく雪積み日の暮るる
野焼せし夜は卵黄のごとき月
西東不明の任地犬ふぐり
向きあへる鴟尾のよき距離朧月
分校の門の際から田の植わる
疲れ鵜の引き上げられて雫せり
美しき空忘れゐし紅葉狩
山暮れて鮎を焼く火の美しき
盆踊鼻緒なじみて終りたる
羊が弾くチェロの絵の部屋月さして
原稿の書き出し決まるつばくらめ
ぱらぱらと喜雨の大粒土匂ふ
滝風に触れしより蝶あらあらし
落椿芯の上向く実朝忌
子の会話聞こゆる位置に端居して
でで虫の葉おもてにをる良夜かな