《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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真木はるえ『句集 神田』(七月堂)より
2024.06.21
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1991年
「狩」同人
第1句集
宵山や灯せば匂ふ青畳
婚の荷につかまりてゆく草の絮
ものの影みな立ちあがり月の道
寒柝の行く手に闇は道をあけ
しぐるるや石それぞれの目鼻立
連翹の黄の奔放に日をはじく
子の誘いことはり母の日の家居
山葵田を幾曲り来し水の澄み
油蝉こゑ張る俄か雨の中
正門を点して父の魂迎へ
人波の方にかたむき荒神輿
冬耕やおのれの影にはげまされ
時の日の水満々と人造湖
イ(にんべん)を先づ手ならしに筆始
読み切れぬ本にかこまれ去年今年
すねの傷かくせぬ丈の甚平かな
一本の槍をなげしに夏座敷
父の日やペンだこの手にペンを持ち
月明やひとつ座敷に死者生者
トランペット吹き緑蔭をふくらます
しなやかに見えてしたたか去年今年
くつきりと畝の立ちたる寒さかな
まくなぎに好かれしかこの婆の顔
灼熱の日の洗礼と思ひ行く
すさまじや即身仏に緋の衣