《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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清水余人『句集 香日向』(飯塚書店)より
2024.09.08
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令和2
「田」同人
第1句集
早稲晩稲色を分かちて稲筵
秋風や路地を繋ぎし醤蔵
新宿に挟まつてゐる寒の月
革コート着て何人も寄せつけず
寒晴やぺたりと月が貼つてある
炬燵から出てきて物を売りにけり
初日いま海離れむと歪みけり
雷鳴や虚空を摑む赤子の手
茄子胡瓜南瓜電流柵の中
猪を捕へる前のから騒ぎ
立山へ能登を足場に冬の虹
さくら見てやぎ見て帰る土手の道
閑居して真つ赤な薔薇を咲かせをり
秋鯖を食ひ唇の光りけり
寒卵割れば元気な黄身ふたつ
受験子やイヤホンコードなびかせて
つちふるや荷台に並ぶ豚の尻
母訪はば炬燵の上に何もかも
父の日や太きベルトを強く締め
寝台を仕舞ひ終着駅涼し
犬埴輪連れてゆきたき春野かな
かぎろへる古墳に人の紛れけり
三椏の明るき終の住処なり