《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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楠戸まさる『句集 飛火野』(本阿弥書店)より
2024.10.03
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2000年
「狩」同人
第2句集
脱ぎすてしごとき漁網や朧の夜
沙羅の花落ちてこの世に音ひとつ
流るるもとどまるもまた水の秋
蓮枯るる枯れきらぬものぶらさげて
白鳥の降りくる大き脚垂らし
耳も目も遊ばせゐたる初山河
竹藪に畳み捨てられゐる暑さ
切り取りて置けば影添ふ鹿の角
三山を手庇に入れ初景色
庭に出て土踏みしめて三日かな
幹こつと叩きて冬木目覚ましむ
耳も目も驚きやすき鹿の子かな
ひとすぢの水の流れて枯蓮田
初みくじ読みて直立不動かな
涼しさに指立て給ひ観世音
春水に押されて鷺の歩みかな
天平の寺極彩の毛虫這ふ
沖合に漁り火ぽつと秋の暮
存問のごとく叩きて裸の木
咲きてはや錆のはじまる白椿
冬ぬくし大き拳の龍馬像
棺桶のごとき風呂桶冷まじや
枯葦の風にきしめる湖北かな
黄落やみちのくの河大曲り