《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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倉持梨恵『句集 水になるまで』(ふらんす堂)より
2024.10.04
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2019年
第1句集
「炎環」会員
冷酒の女に派閥ありにけり
扇風機回して好きになる時間
青みかん一時間後に来る未来
クリスマス星を隠してしまふ街
毛糸編むとき一分は六十秒
両耳に一月の風受け止める
たんぽぽの内なるひかり噴き出せり
私からわたしへ戻る桜の夜
蝉時雨ここにこんなに大きな木
大暑かな音撒き散らすヘリコプター
間取図に浮かぶ未来図明易し
皮手袋抜け出す指のかろさかな
ぶつかれるものにぶつかり冬怒濤
よろこびの尻尾のS字春立てり
ふらここの影ふらここへ従はず
夏つばめ旋回第二駐車場
秋刀魚焼く森のくまさん口ずさみ
寒卵割るや明るき殻の底
手袋をしてむき出しの耳残る
雪柳風を大きく使ひけり
ふらここの音の錆びつく夕まぐれ
冷房の音キーボード叩く音
秋暑し青き螺旋の試し書き
剪定や枝も空気も切る鋏
山笑ふ木々にほぐれし風の音
海月より海月の影の鮮明に
夏つばめ地図拡大の指二本
八月の熱を溜め込むすべり台
花すすき抜けきし風の渇きかな
大皿は立てて収納月今宵