《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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森田たみ『句集 月明』(創風社出版)より
2024.10.08
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2013年
「狩」同人
第2句集
はやばやと天の虜となりし凧
ラムネ飲む童に不思議一つ増え
花冷えや校門といふ鉄格子
連翹を抜けし風もう縺れゐず
推敲の一字削ぎたる涼しさよ
滴りの怺へ怺へて玉となり
指させば矢のごとく落ち夏雲雀
夜も風の気配なきまま終戦日
本尊と蔀戸越しの寒さかな
鳶の輪の中に城ある初景色
初蝶の越えたる水路われも跳ぶ
太陽はビルのうしろに目借時
はつ秋や昨日の記憶はやも褪せ
風連れて来る棚経の少年僧
ふるさとに残る縁側小鳥来る
爪立ちてなすこと多し年用意
探鳥のはじめにふくら雀かな
白寿までひととせあまり母涼し
冬波の引き残したる岩の影
指よりも大きな雫甘茶仏
村の名の消えて村あり桃の花
烏瓜引けば物陰からも出て
解脱とは一夜に散りし大銀杏
数へ日や思ひたちては用ふやし
一つ枡より鬼の豆福の豆
まるく子を集めてゐたる夜店の灯
母の背のまろさそのまま茄子の馬