《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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大崎紀夫『句集 からす麦』(ウエップ)より
2024.11.09
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2012年。
「やぶれ傘」主宰
第5句集
龍太逝く花に嵐のくる前に
ひと漕ぎでふらここ風のなかに入る
ベイジンの夜の高きを柳絮とぶ
突堤の先よりもどる日傘かな
雲の峰龍太の山河のこりけり
牛の尾のしばらく休む女郎花
豆引ける人に丹後の日は傾ぎ
榾くべる手なれたる手を眺めをり
鱈を糶る男らに日の差しきたる
鬼おこぜ顔を残してさばかるる
大寒やからす二三歩づつ歩き
大寒の水吐くホース魚市場
地を出でしこと一寸の福寿草
昼の雪日暮の雨となりにけり
生れたれば馬の子として立ち上がる
土手焼いて土手に弁当開げをり
げんげ食み牛は糶へと出てゆけり
夕雲の色さめてゆく蚊喰鳥
稲妻の次まで窓に肘ついて
ランボーの墓に秋の日こぼれけり
紙漉きの手を七輪の火の上に
それぞれの影を背負ひて炉辺に坐す