《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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林徹『句集 荒城』(角川書店)より
2024.11.26
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2005年
「雉」主宰
第5句集
蝌蚪泳ぐぶつかるまではまつすぐに
花追うて花の飛びゆく奥吉野
篝火を消してしづかな鵜の泳ぎ
晩秋や地へくぐり入る水の音
独酌や虫出しの雷鳴りわたり
春耕や雲ひとひらの湖の国
春の瀧身をひき絞りひき絞り
蜂避けの網をかむりて道普請
菊日和馬丹念に磨きあげ
木菟啼くや毛深きのどをふくらまし
耕すや土起こすたび影生れ
てつせんの蔓てつせんに巻きつける
身を投げしごとく落ちゆく瀧の水
石崖を深く沈めて水温む
詰襟の少年に飛ぶ燕かな
まつくろの蝌蚪まつくろの蝌蚪の影
水黽(あめんぼ)に水強靭にありにけり
揺るるたび大きくなりぬ芋の露
鷹匠は鷹を見鷹は空を見る
羊の毛刈るを羊のながめゐる
母の日のしづかな雨が海にふる
豹涼し肩が歩めば背が続き
短日や船よりおらぶ人の声