《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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夏井いつき『句集 伊月集 梟』(朝日出版社)より
2024.12.26
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2020年
第2句集
「いつき組」組長
冬帝やことに手強きジャムの蓋
荒星や老いたる象のような島
風花を待つべく青空のととのう
淡雪や離婚届のうすみどり
泪より少し冷たきヒヤシンス
咲きかねし梅にみくじのきゅっとかな
愛の日のばりばり潰すダンボール
風つかみそこねし蝶の吹っ飛びぬ
卒業の日のロッカーの凹みかな
なずななずななんにも聞こえないなずな
花びらの濡れしが靴の先にかな
養命酒みたいな春の日のとろん
春の水凹みて鯉の口あらわる
蝶の舌ゆっくり伸びてゆく暮春
睡蓮へさざなみの端のたどりつく
ごんごんと芒種の水を飲み干せり
鷲づかみたる夏帽が膝の上
心通じず秋風にでもなるか
えれじいのように柘榴の実が裂ける