《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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はしご滝
2012.06.17
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「旅の観光マップ」が「滝の観光マップ」に見えてしまった。
これは滝の禁断症状が出てきた合図であろうと、昨年から心残りになっていた福井の滝へ。
おおい町にある「野鹿の滝」(写真)だ。
毎日、メディアで流れ続けている大飯原発があるところである。
ひたすら周山街道を車を走らせること2時間。
白き蝶眠気を覚ます夏野かな
山を越え、野を越え、スムーズに来れた。
やはり思ったとおりのよい滝だ。
日本らしい優美かつ凛々しい滝で、前日の大雨もあって水量もたっぷり。
高さ3、40メートル、幅5メートルほど。
滝は刀とやはり共通しているとこれを見て改めて実感する。
精神を研ぎ澄ませ、真っ直ぐでありながら揺らいでいる。
もう1つ近場にある「不動の滝」へ滝をはしごする。
ここは看板も何もなく、地元の人に聞いてなんとかたどり着く。
この滝も規模は野鹿の滝と同じくらいだ。
上流までは行けるが、下へ降りるには滝と同じくらいの斜面をゆかねばならない。
滝は行ってみないと、難易度がわかりづらいところがある。
ゆえに簡単に人を誘えない。
目の前に滝がある。
なぜ山に登るのかという問いに、登山家は「そこに山があるから」と答えた。
滝も同じ。目の前に滝があるなら何とか傍まで寄ってみたいもの。
上がることは下りてから考えることにして、とにかく根のしっかりした木などを助けに下りていく。
そう言えば、村の人も「どうやって下りたらいいのかなあ。」と言っておられた。
雨後でより滑りやすくなっているが、何とか到着。
予想以上に素晴らしい滝であった。
もちろん、誰一人いない。
滝前に平べったい石を運んできて座る。
靴下は脱いで足を浸す。かなり冷たい。
1時間ほど坐っていた。
嬉しげにそよぐ緑や滝白し
帰途に着いたが、このまま帰ると福井に経済効果は一つもない。
滝はありがたいことにタダだからだ。
というわけで、滝を味わわせていただいたので地元で鯖そばとソフトクリームを食べ、そば餅をお土産に買った。
鯖街道にあるのでめずらしい鯖そば。
ただ、そば好きではあるものの、魚とそばの相性はよいようには思われない。
京都ではにしんそばが名物だったりするが、これも好きではない。
そばの風味を殺し、魚が勝ちすぎるように思われる。
あり得ないし、あっても個人的には大変困るが、多数がディズニーランド並に滝好きになれば、おおい町にも人が殺到する。
滝見に料金を徴収しても人が来る。
そうなれば、ここでの原発の必要性もなくなってしまうだろう。
日曜だというのに、こんなすばらしい場所にタダでも人が来ない。
こういう贅沢をできる幸せを一人噛みしめている。
