《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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室内楽の響き
2012.12.14
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13日(木) 京都コンサートホール内の小ホール、アンサンブルホールムラタにて「古川展生 チェロ・リサイタル」。
古川さんと言えば、映画「おくりびと」のチェロ独奏で有名になった。
そのせいか聴衆の入りもそれなりで、1階席はほぼ埋まっていた。
演目
・ヒンデミット「無伴奏チェロ・ソナタ」
・ベートーヴェン「チェロ・ソナタ第3番」
・黛敏郎「BUNRAKU(文楽)~チェロ独奏のための」
・ラフマニノフ「チェロ・ソナタ」
チェロの音色ももちろんよかったのだが、それより私の目を引いたのはピアノ伴奏者の青柳晋さんであった。
見た目は平均的なとくに目立つところのない会社で言えば係長っぽい人。真面目に顧客のクレームに対応しそう。
見た目に目立つところはないが、演奏しているときの譜面を見る目が射るように真っ直ぐで真摯。目が素晴らしい。
そして、奏でる音もその目の通りの音が出る。
何というかまっとうなのだ、奇を衒ったところはもちろんなく、それは伴奏という脇役を心得ているからという以上のまっとうさ。前衛的なところは一つもない。
今回はじめて知ったピアニストだったが、CDもすでに数枚出している。
圧巻はラストのラフマニノフであった。
ラフマニノフがチェロ・ソナタを書いていることを知ったのもはじめて。
ラフマニノフといえば、まずはピアノ曲、交響曲、そして声楽だろうか。
チェロのイメージはまったくなかったが、実にいい曲である。
チャイコフスキーの流れをしっかりと受け継いだ抒情性が見事に表れている。
you tubeに彼らの演奏ではないが、同曲がアップされているので紹介しておく。
http://www.youtube.com/watch?v=kwvyFAkjogA
一見眠たそうな古川さんと生真面目な青柳さんのコンビの気はぴったりと合わさり、極上の掛け合いを見せてくれた。
やはり生演奏を聴かなければならない。オーディオマニアは録音で事足れりとする人もいるが、それは何かが違うような気がする。
アンコールもラフマニノフとベートーヴェンの小品。
帰りにホールで青柳さんのCDを買った。
写真の「ジョン・フィールド ノクターン集」。
ジョン・フィールドも初めて聴く作曲家だったが、解説によるとショパンに影響を与えるほどで、ショパンの「ノクターン」はフィールドの「ノクターン」から生れたのだそう。
早速聴いてみた。清澄な響きが心地よい。心の湖水が静かに揺られていくようだ。
2週間前にも同ホールで演奏を聴いており、これも好演だったので書いておく。
ただ、残念ながら聴衆の入りはいまひとつ。
モーツァルト・トリオ
■藤原真理(チェロ)
■ジャン=ジャック・カントロフ(ヴァイオリン)
■ウラディミール・メンデルスゾーン(ヴィオラ)
カントロフが指揮活動に専念するため、このトリオでの活動は最後だという。
これは聴いておかねばと。
藤原さんのチェロは以前、バッハの無伴奏を法然院で聴いたことがある。
日本トップのチェリストであることは言うまでもない。
カントロフのバイオリンは高音ですら温もりのある音でキーキーしたところが一つもない。
見た目通りの紳士的な演奏であった。
ヴィオラのメンデルスゾーンはあの「結婚行進曲」の作曲家メンデルスゾーンの血を引いているそうで、これも温厚なゆったりとした演奏。
曲目は
・モーツァルト「6つのプレリュードとフーガ」
・ベートーヴェン「弦楽三重奏曲ハ短調」
・シューベルト「弦楽三重奏曲第1番」
・ベートーヴェン「弦楽三重奏のためのセレナード」
帰りにここでもCDを買う。演奏がよかったものは買って帰ることになる。
モーツァルト・トリオながら曲目はすべてベートーヴェンであった。今回のコンサートの曲も入っている。
収録されたのは1986年。ジャケットの写真も若い。レコードでも出たのかもしれない。
26年を経て同じメンバーで同じ曲を弾く。なかなかできない経験だ。
最近は大規模な交響曲もいいが、コンサートは小ホールで室内楽をじっくり聴いていきたい気分になっている。
