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《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記

断食三週間

2013.10.19

奈良県は生駒山中腹にある断食療養所の静養院にて、三週間入寮しておりました。
ここは大正7年から100年近く営まれており、現代ではほとんどないと言われる水だけの断食施設です。
野菜ジュースや酵素ジュースなどを摂取するところは多いようですが、それらは厳密には断食とは言えないでしょう。

常時10人前後で、断食の目的も様々。
昔は病気治療が主でしたが、今日ではダイエットはもちろん、アトピー、喘息、鬱、不眠症などで来られる方が多いようです。
私はとくに治療という目的は持たず、胃腸から身体をクリアにすることによって、どういう反応が起こるかを体験しようと思って楽しみにやってきました。

2,3日程度なら家でもできるでしょうが、長期となると仕事はできませんし、やはり世間と隔絶した環境が求められます。
静養院の傍には宝山寺があるものの、門前町は寂れてしまっていて欲を喚起するものはほとんどありません。静かで晩は鈴虫を主とした秋の虫が鳴いているのみ。日の出も夜景も見事。

こちらを選んだ条件として、水だけの厳密さはすでに挙げましたが、そのほかに
1)特定の宗教を強調していない
2)義務となっている行事がない
3)個室である
こちらの求める3点を満たすものであったためです。
1)は行と見ようと療養と見ようと断食は断食ですから、見方はどうでも構いませんが、特定の宗教の教義を強調されるようなところは面倒だということ。
2)は畑仕事やヨガなどさせられるのは、これまたしんどく面倒だということ。放っておいてくれるのがいちばんありがたい。
3)はもっとも重要な条件です。ただ、断食が流行した昔は6畳一間に3人で寝ていたようです。
ちなみに100年近い建物なので、潔癖症の人には厳しいかもしれません。また、しばしばムカデなどの虫も部屋に出没します。

断食のスケジュールは3つに分けられます。
予備断食・本断食・後断食で、3週間ならそれぞれ2日・10日・9日という割当となる。
これから時間軸に沿って、私自身の体験とともに述べていこうと思います。

予備断食は初日がおかゆ・2日目は重湯を朝(7時15分)・昼(11時)・夕(16時)の3回いただき、胃を小さくしながら本断食の準備に入ります。
本断食は水だけで10日間過ごします。水は1日2リットルほど。
食べないことに関しては、実は何ともありません。多少お腹が鳴る程度で食べたいという欲求は起こらない。ただ、これは人によるもので、ずっと食べ物を思い浮かべる人もいます。
食べないことより、断食反応のほうにしんどさはあります。
一般に共通するのは、だるさ、熱っぽさ、頭痛で3日ほどでピークに達します。
食べすぎだった人は胃酸が多く湧き、凝りがある人はその凝りがより強調される。
食べないことに身体が慣れれば反応は収まってきます。

しかし、私の場合はきつい冷え性と神経過敏の2つを抱えているので、この2つには期間中ほとんど苦しめられておりました。
断食中は体表面が1度下がるのでより冷えがきつくなったように思われます。布団からほとんど出られない日も少なくなく、手も外に出せないので本も読めず、蓑虫のように過ごしていることが多かったです。
本来なら身体を動かすべきですが、体力が落ちているので散歩もままならない。立ちくらみもしばしば起こります。

そういった状態でも意識だけは明瞭で、胃に行かない分、脳に気が集中し、ただでさえ過敏な神経がより過敏になる。さすがにあまりにもきつく、睡眠時にパニック発作が起きたり、動悸が激しくなったので、途中ポカリを少しいただきました。
ポカリは飲む点滴ということで、一時的にわりと楽になりました。ポカリの力をはじめて実感しました。
それでも、状態がきつく、本来は断食中に薬を飲むのはよくないのですが、自律神経の副交感神経を優勢にするパニック発作の薬を服用しました。断食中は胃に何もないので効きすぎるということでしたが、逆にどれくらい効くのか試してみたくなり、錠剤を爪で割れる限界のほんの一欠けらを試したところ、本当に驚くほど効きました。
10日たっても食べることに関心がまったくなく、期間を長くしてもずっと続けられたでしょう。

本断食が終れば、本断食とほぼ同じ期間を設けて回復食をいただく後断食に入ります。
この時期が重要で、昭和3、40年代に断食ブームが起こり、あちこちに道場ができたらしいのですが、後断食の期間を取らず、本断食を終えていきなり普通食にして腸閉塞が起こり死亡した例があったそうです。
1、2日目は重湯と梅干。
3、4日目は3分粥。朝は味噌汁と昆布や海苔の佃煮などを少し。昼は煮物が多く、みかんゼリーや小豆などの甘いものがつくことも。夕食も昼と同じ感じ。
3分粥に入ってお粥の美味しさをしみじみと味わうこととなりました。
よく噛んで食べるのがよいことは誰も知っているでしょう。しかし、断食をすると体験としてそうせざるを得ず、その大切さを思い知らされます。この一事だけでも断食の意義は十分にありましょう。
よく噛めば、食べる量もそれほど必要なくなってくる。
5、6日目に5分粥、7、8日目に7分粥、最終日は全粥と水分が減っていき、おかずの量も増えていきます。
とくに痩せたいわけではありませんでしたが、毎日体重を量ることになっており、本断食終了時点で7キロ減、回復食で2キロ戻ったので、初めより5キロ減りました。

義務としての行事はありませんが、朝7時と夕方18時に静坐を15分行います。
義務ではないので、出席者は入寮者の半分かそれ以下。朝は私一人だけということもありました。
まず般若心経を唱え、初代院長の作った静坐の辞を唱えます。朝夕とも一度も欠かさず出席しました。腹から声を出すといくぶん冷えが収まるので、この時間が待ち遠しかったのです。生活のリズムを整えることもできますし。
また、うろ覚えだった般若心経をこの機会に、覚えてしまおうと思いました。おかげで1週間程度で暗唱できるようになりました。声を出すのは身体を目覚めさせるのによいので、これからも続けていこうと思っております。これまた昔覚えていた天津祝詞も、もう一度暗唱できるようにしてみてもいいかもしれません。

夕方の静坐の後、2代目院長を囲んで入寮者たちとたわいもない話、ためになる話、いろいろと楽しく歓談いたしました。
その中で、夕飯は寝る4時間前に食べること、そうすれば胃の中が空っぽになり、夢を見なくなるという話をされました。
夢は忘れている場合もあるでしょうが、これは理に適っていることだと思ったので、私の考えを述べてみます。
人間の睡眠の周期はレム睡眠とノンレム睡眠が90分ごとに訪れるようになっています。
夢を見るのはレム睡眠の間で、レム睡眠とはRapid eye movement sleepの略で、つまり眼球運動が起こる浅い睡眠のことです。
睡眠中も胃が動き続けるということは、当然眼球運動も大きく起こるわけで、夢を見やすくなります。眼球運動が静かなら夢を見ることはないと考えられるのではないでしょうか。

朝の9時から、初代院長の30分~1時間程度の断食健康講座のテープが流れます。
部屋で寝ながら聴くように作られているのですが、部屋でははっきり聴こえない。
これも毎朝、スピーカーの前に椅子を持っていって熱心に聴いておりました。
昭和40年代から50年初めに録音されたもので、内容よりも昔の人の味のある話し方に耳を傾けていたのです。明治生まれの人の言葉なので、今の人にはわかりづらく、興味も湧かないかもしれない。しかし、矍鑠として腹に力の入った声で「~と思うのであります。」と語っているのは聴いていて心地よいものです。

2日に1度シャワーを浴び、入浴は最初と最後だけで4日ほど。順番なのでゆっくり浸かってもおれず。

3週間、PCに触らず、財布にも触らず、朝は日の出を拝みながらゆる体操やストレッチをし、少しの散歩と読書の毎日。
本も冷えと神経過敏のせいで思ったより読めませんでしたが、こういう機会なので長編を読もうとトルストイの小説「アンナ・カレーニナ」を上中下巻読了。そのほか、哲学、宗教、脳科学、東洋医学関係など十冊ほど読む。

最後に、入寮する前に院長から退屈すると言われていましたが、それは私にはありませんでした。
よく話しているように、暇を愛でるという表現をしていますが、般若心経に即して言えば、暇は空即是空。空=空という当たり前のことですが、ほとんどの人は最初の空を無だと思っている。暇は無であるからそれを有に変えようとして暇を潰そうとする。
しかし、色即是空で色がほどけて空というエネルギーに変わるわけですから、エネルギーの総量は変わらない。空は無ではなく、エネルギーに満ちている。よって暇は愛でられるべきもので、潰したり逃げたりするものではない、と思うのであります。

3週間で夜型だった生活が朝型に変わりました。
冷え性はとくに太陽を浴びる朝型に変える必要があるので、このまま続けていきたいものです。
断食効果はまだわかりませんが、これから出てくるのでしょう。
食の大切さを感じるためには、断食ほどよいものはないかもしれません。
誰もが一度は断食をしてみれば、細胞の大掃除がなされて医療費は削減され、消費税も上げる必要はなくなるかもしれない。ただ、こういうものは自発的に行われなければ意味のないものでしょうから、意味のない夢想であります。


<入寮中に詠んだ句>

 鈴虫やひねもす床に臥してをり

 秋風を百年受けし療養所
 
 軒の端に葉の並びたる秋日和

 猫じゃらし揺れて庭石しづかなり

 秋の日や女(おみな)一人の草むしり

 ゆるやかに声の萎むや秋の蝉

 秋の雲孤を描きつつ烏消ゆ

 宵闇に吸ひ込まれゆく読経かな

 夜長にて長編「アンナ・カレーニナ」

 からっからの蜘蛛吊らるるや朝寒き

 はちきれんばかり銀杏抱く母娘

 食断たば味はひ深む秋もまた


業務を再開します。
本の整理をお考えの際はご一報を。

断食三週間

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