《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 | 日記 | しぶやぎ

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《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記

しぶやぎ

2014.05.21

日帰りで東京へ。行先は3つ。
世田谷美術館で「茨木のり子展」。
渋谷に移り、おそらく日本で唯一のヤギカフェである「桜丘カフェ」へ。
同じく渋谷の名曲喫茶「喫茶ライオン」。

・世田谷美術館「茨木のり子展」

京王線の芦花公園駅で降り、歩くこと10分ほど。
若干旬を過ぎているもののまだみずみずしさのある杜若が咲き、無数の鯉が川を泳いでいる。
茨木さんといえば、「自分の感受性くらい」や「椅りかからず」の自立した詩で有名です。
売れない詩の世界にあって、さらに女性詩人に絞ってみれば断トツの人気でしょう。

自立したという表現を使いましたが、言葉が立っている。
美人で凛とした姿を重ね合わせると、言葉と人格が一致しているのが感じられます。

いろいろな資料が展示されているなか、ひときわ目を引いたのがスウェーデン製の椅子。
夫がねだって買ったもの。茨木さんは夫の望むものは断ったことがないそうです。
当時としてはなおのこと、見るからに座り心地のよさそうな高価であろう椅子。
しかし、夫はほとんどその椅子を活用することなく、数ヵ月後に逝去する。
椅子の詩は「椅りかからず」があまりにも有名ですが、椅子のそばにあるパネル展示の詩にもっとも心を動かされました。
 

「椅子」
 
 
  ・・・あれが ほしい・・・

子供のようにせがまれて  
ずいぶん無理して買ったスェーデンの椅子  
ようやくめぐりあえた坐りごこちのいい椅子
よろこんだのも束の間
たった三月坐ったきりで
 あなたは旅立ってしまった

あわただしく

別の世界へ
・・・あの椅子にもあんまり座らないでしまったな・・・
病室にそんな切ない言葉を残して
 
わたくしの嘆きを坐らせるために

こんな上等の椅子はいらなかったのに
ひとり
ひぐらしを聴いたり
しんしんとふりつむ雪の音に
耳をかたむけたりしながら
月日は流れ

今のわずかな慰めは
 あなたが欲しいというものは
一度も否と言わずにきたこと
そして どこかで
これよりも更にしっくりしたいい椅子を
見つけられたらしい
ということ


存在はなくなれば、それに反比例して存在感はなお増す。
亡くなってなお、光彩を放つ。それは茨木さんもそう。
この詩は『歳月』という詩集に収録。
夫へのラブレターのようなもので、生前に出すのは恥ずかしく、死後に甥が出版して日の目を見ることに。


・桜丘カフェのしぶやぎ

桜丘カフェのテラス席には、さくらとショコラというミ看板ヤギがいます(写真)。
ともにメスで、さくらはシバヤギで白、ショコラはトカラヤギで黒。どちらも4歳。
親切な女性スタッフの方が、嫌な顔一つせずこちらの突っ込んだ質問に答えてくださいました。

渋谷のど真ん中でありながら、向かいの建物は少し離れており、両隣もビルということで苦情はないそう。メスなので発情期には相当うるさいようですが。
エサはもっぱらチモシーのみ。夜間も営業しているので、晩は柵を覆うだけ。
感染症予防もしょっちゅうではないよう。散歩に出かけることもあまりなく。
ストレスはそこそこあるでしょうが、あまり過保護にしないほうが強く生きられるのか。
個体差なのでしょうが、ヤギスケと違ってしたたかさが感じられます。
メスですがともに角があり、結構頭突きをしたがる攻撃性が。
除角をして人工哺乳で育てればより飼い易くなるのですが、その分、耐性も弱まるかもしれません。

なんと写真集『しぶやぎ』と2匹を主人公にした絵本『めだまとやぎ』まで販売。もちろん購入。
店頭に「しぶやぎのふんチョコレート」を販売とあったので、お土産にと思ったのですが、残念ながら在庫がなく。あまり売れ行きはよくないようで。
道行く人はもう慣れたからか、あまりヤギに感心を示さないのが残念。


・名曲喫茶「ライオン」

桜丘カフェから駅へ戻り、道玄坂を上る。
昭和元年に創業した名曲喫茶。
度でかいスピーカーが正面上部にパイプオルガンのように配置。前にはベートーヴェンの像。
座席も教会のようにスピーカーに面して配置。
アンプとプレーヤーはいくつかありましたが、DENONやSONYといったわりと普通のものが多かったように思います。
はじめはCDがかかっていたので、リクエストでレコードをかけてもらうことに。
暗い雰囲気なのもあるでしょうが、あまりやる気は感じられず。
スタッフがクラシックに詳しくなく曲を間違えてかけ、それに気づかず。
時代がかった場所なので、シューマン交響曲第一番をフルトヴェングラー、ウィーンフィルの演奏で。 やはりレコードの音に軍配が上がる。
当然禁煙ではないので、煙がもうもうとして来たところで退出。
こういう店がまだ残っているのはすごいこと。「帝都随一」と称するこのシステムで一度は聴いておくべきかと。

しぶやぎ

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