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《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記

本というもの

2015.01.14

最近、本や本屋についてよく見聞きします。
もちろん私自身が古書店の店主ということなので、本に関することはアンテナに引っかかってくるのは当然なのですが、やはり本というものの価値を見出す人が少なくなっており、その危惧の現われが強くなっているように感じられてなりません。

本屋がつまらなくなっているという記事がありました。
ほとんどがコンビニ化で個性がなくなっている、また大型店は広すぎて本との出会いを求めても本が見つからないといったことなど。
地方に行くほど大型店が目立ち、小規模な個性的な本屋というものは成り立たなくなっている。
当然それは、顧客がそういうものを望んだ結果でもあり、書店だけの責任ではありません。
書店は店とお客で作るもの。顧客レベルという言葉を使っていいなら、レベルに応じた品揃えにしかならない。地方で深遠な哲学書を置いたところで売れるはずもなく。

哲学書どころか、地方には書店自体がなくなっています。
一日一店全国から書店がなくなっているという記事があり、自治体の5分の1は書店そのものがないという。おそらくこれは新刊書店だけだと思われますが。

図書館の利用も大きいでしょう。
本は好きだけれど、無料で読めればそれに越したことはないという考え。
これには私は大きな不満を持っています。
図書館は調べ物を探すにはよいのですが、やはり読むべき本は自分で購入して読むのが鉄則かと。身銭を切ったものはやはり、それだけ真剣さが増します。しっかり選んで買ったものですから。
読んですぐに手放すにしろ、本との向き合い方、姿勢が適当に借りるのとはわけが違う。
税金を払っているのだから利用しなければという考えもありますが、そういう考えの人ほど大した額の税金ではないように思えます。
現在では一部をのぞいて古本になれば安すぎるほどです。本は安い。

という私も、新刊書店には足を運ばなくなっています。
古書のみならず新刊書も買いますが、もっぱらアマゾン、そして当店も出品している日本の古本屋が中心。日本の古本屋はあと数日で大幅にリニューアルするので使い勝手がよくなると思います。やはりこの2サイトは便利です。
また電子書籍でも少しずつ読むようになりました。ご承知のとおり、昨年には電子書籍の出版までし、今年も静坐関連の復刻などを進めております。

残念ながらじっくり本を読む、物事に取り組むという姿勢は現代では忌避されています。
要するにじっと座っていられる人間があまりいないということ。
ですから、まず坐ることからと私は静坐を紹介しているわけです。

本に親しんでいる親の子どもはやはり本に親しみを感じるのは当然で。
本を読んできた人間かどうかは見ればわかりますし、話を聞けばさらに明らかになります。
自身を取り巻く狭い環境以外を知らないということが明らかになる。
地理的環境は大したことではありませんが、古今の賢人たちはどう心身や世界と関わってきたのかを垣間見ることすらない。それは怠慢と言ってもいいのではないでしょうか。
私の書いたものは難しいとよく言われますが、決して難しいとは思っていません。
ただ、難しいという人が考えたことがないだけだと思われます。
本も読む人によって理解の差が出る。自分自身の力量以上に読み取ることは不可能です。
ですから、本だけ読んでいても理解が深まることにはならない。これが頭でっかち。
実践と読書のどちらが欠けてもよろしくない。両者が相乗効果を生む。バランスを取ってくれる。
実践は自身を展開し、読書は自身の確認となり、そうなれば読書もまた実践となり、知行合一ということになるのでしょう。

今年の歌会始のお題は「本」でした。皇后さまの歌

 来し方に本とふ文の林ありてその下陰に幾度いこひし

身体で本を読んできた人は、それが血肉化されて本が身体の中に入っている。たとえ表層意識では覚えていなくても、身体深くに染み入っている。本をじっくり味わえる人は、物事全般も深く味わうもの。一事が万事。

You tubeでロケット開発もしている植松電機の社長の感動的なお話がありました。
「思うは招く」という題で、夢を大切にというのが内容の中心ではあります。
最初に、社長のおばあちゃんのお話。戦後に樺太で貨幣価値がなくなり、貯金の意味がなくなったと。
だから、「お金は値打ちが変わってしまう。だからお金があったら本を買いなさい。」と教えてくれたそうです。自分のなかに入ったものは取られることはない、またそれは新しいことを生み出すのだと。それで植松少年は本屋さんが好きになります。
最初の話なので、最後にはあまり覚えていなくなるかもしれませんが、夢はかなうという話より、私はこの教えのほうに感心させられたのです。
https://www.youtube.com/watch?v=gBumdOWWMhY

「お金があったら本を買いなさい。」
本屋が言うと商売にしか聞こえないでしょうが、本を読んで本に親しんできた少年が現在古本屋を営み、自身の実践から語っているのだと聞いていただければうれしいです。

それから、今月から東山で古書店を営んでいた方が、うちが以前やっていた古本(音)カフェの近くで「読書空間 ことから屋」(京都市上京区)を立ち上げました。
大正時代の町家を改装した落ち着ける空間です。
お近くの方はふらりのぞいてみてください。
http://kotokaraya.on.omisenomikata.jp/

本というもの

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