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《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記

本は古人の糟粕なれど

2015.05.17

本に真理を記述することはできない。
釈迦もイエスもソクラテスもみな、文字に記すことはありませんでした。
老子は関所の番人に、書いてくれなければ関所を通さないと言われしかたなしに書いたと言われています。

本は古人の糟粕、つまり残り粕ということで、本をありがたがったところでしかたがない。『聖書』にイエスはおらず『老子道徳経』にも老子はいない。たしかにそう言えるでしょう。
しかしながら、虚心坦懐に読めば彼らはいきいきと私たちの目の前によみがえってくる。
ドライフーズ製法のお味噌汁のように。かすかすの固形物にお湯をかけると、あっという間においしいお味噌汁が立ち現れてくる。それと同じ。

白取義彦氏の新書『独学術』(ディスカヴァー)を読みました。
今日ではさまざまなメディアが発達しているにも関わらず、やはり学ぶ基軸となるのは本とならざるを得ない。
学校で教えてもらうのも自分が学ぶという主体性があってこそ。結局自分で本を読んでいくしかありません。
で、白取氏はドイツ哲学の専門家ということもあってか、頑固親父な主張は非常に共感するものであります。

「本を買うのを惜しむな」から抜粋
 「家のローンなどを支払うために節約しなければならない状況にある人は独学にはまったく不向きであろう。本を買うのを渋るからだ。図書館から借りた本ですむわけがない。借りた本で得た知識はその本を返却したときに消える。ウソのような本当の話だ。
 読みたい本、読んでおくべき本を買うのをためらわせるほど節約しなければならないくらいのローンを抱えるというのは、もはや精神が危ないとわたしは思う。それは人間的な生活を犯すことだからだ。それは抱えるべきローンの額ではないのである。ローン支払いのために人間生活を壊すというのはどう見ても狂気であろう。」

すかっとする文です。
ローンというものの捉え方もそのとおりだし、以前から私も述べている図書館で借りたものは身につかないというのも同じ。そもそも本代を惜しむくらいのケチは知への愛情のなさを表わしている。そういう人が、身につけられるものなどたかがしれている。
古書店主だから言うわけではなく、本気で本を読む人は本を無料で借りるという発想はないでしょう。

おもしろいのは、「『眺め読み』で書物に勝つ」の章
「眺め読みとは、本をまともに読まずにしばらく眺めることである。
 まず、面倒そうな本を買ってきたら、そのあたりに置いておく。机の上や本棚に鎮座させない。テーブルやソファの上にぽんと投げ出しておくのである。食卓の上に置いて、隣で麻婆豆腐やカレーを食べてもいい。
 そういうふうにぞんざいに扱っていると部屋になじんでくるものだ。最初の違和感、居丈高な感じが薄れてくる。威厳が少し減ってくる。こういう場所に住むしかないかというあきらめが本から滲み出てくる。本が丸くなった感じである。」
オーディオには「エージング」という用語があります。設置したばかりのスピーカーやアンプなどの機器は、しばらく音を鳴らしていくことでしっくりくるようになる。音の硬さが取れてくる。これと同じで本にもエージングをさせるということですね。ハイデッガーやヘーゲルなど強そうな名前だけで怖気づきそうだと思ったら、試してみる価値はありそうです。

こういった「面倒そうで高価な古典は古書店で安く売られているものだ。しばしば店内ではなく、店の外で均一本として売られている。具体的にいえば、『世界の名著』シリーズ(中央公論新社)がそれである。見つけたら、舌なめずりして買うべきである。」
私は非常に深く共感していますが、どれだけの人がそう感じられるか。
「世界の名著」シリーズは500円均一で売られていることが多い。ベルクソンもニーチェもプラトンもみな500円。500円で私たちが愛情深い目でお湯を注いでやると、彼らがもくもくと目の前に現れるわけです。500円で哲学者たちに会えるんですからね、なんと安上がり。まだ読もうとするだけましだと言われるかも知れませんが、これを図書館で借りて済ませようとする輩にはかける言葉もありません。

本を読むというのは、職場と家庭とサークルや近所づきあいといった狭さの中で処世術を駆使していればよいとする人たちには無用でしょう。
もちろん、そういった処世は大切なことではありますが、それらを根っこから支える人間、生命、世界、宇宙のありよう、理を静かに俯瞰するのに本は大切です。
つまるところ、読書は瞑想そのものであり、真理は本の中にはありませんが読んでいる私たち自身に真理が顕現していることに気づかされるのです。

写真のお題「本って食える?」

本は古人の糟粕なれど

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