《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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尾亀清四郎『句集 八荒』(銀杏発行所)より
2019.06.24
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平成10。
「銀杏」主宰。第6句集。
最後はヨーロッパを旅した句で占められ、私が行ったのと近い年で同じ場所に行ってもいるが、やはり海外詠は難しいと思う。同時期の知っている場所でありながらさほど心に訴えない…
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安田俊子『句集 冬薔薇』(ふらんす堂)より
2019.06.19
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1990年。
「嵯峨野」同人。
軽やかに轆轤まはりて春立ちぬ
開扉して菩薩の御目花に向く
をろがめばわれも善女や御身拭
過疎となる三戸に落花惜しみなく
花筏ついと離れてゆくもあり
掌に落花こころに古き恋ありぬ
花に立…
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井沢正江『句集 晩蝉』(牧羊社)
2019.06.15
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昭和52。
「雪解」同人。
浸す手に水の刃立つる泉かな
秘仏見る障子は白刃立つるごと
火の怒りあからさまなり古暖炉
すくひつつ白魚のみな指にそふ
落花まだ一片づつの間ありけり
一片にまなじり引かれ花ふぶく
片膝の起た…
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荻野信子『句集 推古の音色』(本阿弥書店)より
2019.06.10
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1990年。
「雨月」同人。
太綱を地にお木曳の休みがち
善も悪も弥陀は一如と初法話
大吉にも一戒はあり初みくじ
春寒や降ろさるるなき磔刑像
こけし一つ買ふ惜春の旅の果
礫にも寄りくる迅さ柳鮠
炉塞いで畳まさをの小半…
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尾亀清四郎『句集 飛天』(東京美術)より
2019.06.06
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平成6。
「銀杏」主宰。第5句集。
追馬の勝ちし合図の鉦たたく
渓流に瓜冷ゆるころ客来る頃
春月に放つ矢をもて神楽果つ
大梁に湯気岐れたつ薬喰
堂寒し大和坐りのみ仏と
汲みて売る寒鯉槽の底ひより
みづうみに出てそれつ…
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佐藤瑠璃『句集 尾白鷲』(東京美術)より
2019.06.02
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昭和51。
秋櫻子門下。
公魚の湖はなれてはすぐ凍てぬ
傘触れて牡丹のひとつくづれけり
牧夫来て牛つどひそむ九輪草
絵硝子を影ひかり過ぐ夏の蝶
すぐ母に風邪さとらるる初電話
蘆花鏡花母の遺せし書を曝す
梟に白夜の森の…
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大竹きみ江『句集 往くさ帰るさ』(牧羊社)より
2019.05.27
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昭和60。
「雪解」同人。第3句集。
くさめして月にふたたび顔あげず
一塊の野火燃ゆ沼の面にも
花疲れ老の手をひくそのことに
涅槃図の隈なる蝶は吾がつれ来し
種芋を伏せて母の地うたがはず
み仏を辞して日傘の道ふたた…
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由山滋子『句集 雪繽紛』(東京美術)
2019.05.20
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昭和60。
「かつらぎ」同人。第一句集。
夭夭の一語を識りし夜長かな
鷽替の神事に巡査もまれけり
風花の地に触るるともなく消ぬる
一束の菫をもつて存問す
群青の深雪月夜といひつべし
我が声におうと出られし裸僧
一面に…
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館野翔鶴『句集 峻嶮の鷹』(河内野発行所)より
2019.05.16
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昭和61。
「河内野」主宰。第4句集。
流さるるさだめの雛を舟に積む
入水の滝も崩御の渕も澄む
波は円重ねやまざる噴井かな
猪垣の走る縦横無尽かな
総指揮は消防署長芦を焼く
春泥につらねて敷きし歩板かな
布の水ばかり…
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『浅井陽子集(自註現代俳句シリーズ12期11)』(俳人協会)より
2019.05.09
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平成29。
「運河」「晨」同人。「鳳」主宰。
蝶が蝶追ふ感覚の縮まらず
籐椅子のヌードモデルのガウンかな
祭の子父の太腿つかみ来る
新聞を漏斗に種を収めけり
月山の仔狐跳べる良夜かな
盆梅展二階の畳ふはつけり
一樹と…