《古書・古本の出張買取》 奈良・全適堂 の日記
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岡崎鶴子『句集 月日貝』(真生印刷)より
2019.12.20
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平成13。
「霜林」「風雪」同人。第3句集。
夫帰るまでを灯さず月の椅子
啓蟄や期日重なる誘ひ文
わが窓に空もどりくる柿落葉
百済野に孤影の長き秋思仏
土間開けて梅の風来る藍の華
常濡れの土間冴返る藍濯ぎ
紅梅の雨を…
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岡崎鶴子『句集 望郷』(真生印刷出版部)
2019.12.09
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平成21。
「霜林」「風雪」同人。
第4句集。
蔵王堂の屋根浮くほかは花の雲
放ち矢のごと疾走す駒くらべ
ひぐらしやそり身にくだる寺の磴
波裏に真珠の育つ月あかり
白萩や声に句碑読む夕あかり
あたたかや還暦の子と掌…
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野田節子『句集 折紙』(牧羊社)より
2019.11.28
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平成1。
「霜林」所属。第2句集。
俎に母の音して日の永き
山葵田に水の音たつ天城越
美濃尾張分けて余寒の一夜城
よろめきしとき梅にほふ社家の橋
奥嵯峨に庭師日永の石談義
旅を恋ふ句帖の余白雨蛙
ここよりは霧かよふの…
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前山松花『句集 風狂花』(牧羊社)より
2019.11.19
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平成3。
「脈」主宰。第3句集。
ヒヤシンス厨に妻の誕生日
冷蔵庫の奥より臓腑摑み出す
冬浪を見る癌である筈がない
一望の函館の灯に雪降れり
霧ふかき背に声をかけ八合目
目つむれば枯芝に日の聚まれる
釣竿もひとも動か…
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角兎栄児『句集 旅寝』(富士見書房)より
2019.11.11
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平成1。
「雲母」同人。第1句集。
枯萩に日はやすやすととゞまれり
園児らの唇すこし開く夏景色
穀倉に米ぎつしりと夏が来る
見たきものだけ見て寒の故郷かな
話す間もひかりの殖ゆる朴の花
吾亦紅風に現はれ雨に消ゆ
何處…
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原田美千代『句集 触るる』(自家版)より
2019.11.07
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昭和54。
第1句集。
盲人であり俳人。教会も出てくるので、キリスト教徒でもあるよう。
自らの障害を詠まれる句は、やはりリアリティーがある。
風鈴の句も上手い。
盲人に手をかしそそぐ甘茶かな
形よく描けし眉毛や初…
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小寺勇『俳句集 踏んだり蹴ったり』(文童社)より
2019.10.28
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1990年。
日野草城門下。
無季も多く、俳句というより関西弁の川柳が多い。
ぼやき連慷慨連がおでん屋に
きつねうどんすする水洟すすりあげ
春眠に何やら刻む音コトコト
理髪師に首を預ける目借時
西日きびし同窓名簿に…
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松井三棹『句集 七干支』(私家版)より
2019.10.21
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平成19。
「俳句作家」「草苑」同人。第3句集。
鼻すじの彩とりどりの残り鴨
救世観音半歩踏み出す青葉光
枯色となりおおせたる七変化
紫の筋目の滲む白菖蒲
大輪の牡丹一揺れして開く
百済仏すつくと立ちし菊明り
奥宇陀…
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高田敏雄『句集 草笛』(玉梓発行所)より
2019.10.15
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令和1。
「玉梓」同人。第1句集。
昔ほど鳴らぬ草笛鳴らしけり
忘れゐし梅酒琥珀を深めをり
風鈴をはづし小さき窓を閉づ
古井戸の水の四角に月浮かぶ
何を見て身を翻す秋燕
母の忌や母活けしごと小菊活け
ややありてのちの…
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中村花芙蓉『句集 ひとつぶの露』(私家版)より
2019.10.08
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平成1。
「雲海」「俳句作家」「水葱」同人。
半世紀もの長きをハンセン病の療養所にて過ごす。
病院の花を見に来る人のあり
火蛾かなし病める灯を夜々奪ふ
黍畑に母の声ある帰省かな
不自由は不自由として冬籠
金魚玉看護…