《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
-
稲畑汀子『汀子句集』(ウエップ)より
2020.10.29
-
2003年復刊。 「ホトトギス」名誉主宰。第1句集。
今日何も彼もなにもかも春らしく
牧場はすなはち雨のクローバー
この辺の景色となつてゆく芒
景変りつゝ菜の花のつづきけり
湖に出て見るだけの避暑二日
かくれ部屋あ…
-
山崎千枝子『句集 素顔』(ウエップ)より
2020.10.25
-
2003年。
「燎」主宰。第1句集。
うかと出て春宵の街まだ寒き
車窓より飛び散る紙片夏来たる
夕端居語り部のごと語りをり
ひとことに思ひめぐらし鉄線花
万緑や父の一徹衰へず
白地着て父飄々と入院す
食いまだ叶はぬ父…
-
山本一歩『句集 神楽面』(文學の森)より
2020.10.21
-
平成23。
「谺」主宰。第4句集。
蚊の声の辺りを二つ三つ叩く
扇風機止つてをりし羽根が透け
さりげなく揺れて蓑虫日和かな
焼藷の屋台と歩調合うてをり
降る雪の中なる雪を掻きにけり
ラムネ抜いて何か忘れてしまひけり
…
-
大杉洋子『句集 蜃気楼』(あわ書房)より
2020.10.19
-
2008年。
「青海波」同人。第1句集。
大漁旗祭太鼓の破れぬか
水平に年移り行く去年今年
うぐひすの音の度ごとに杖を置く
これからは小市民なり卒業す
秒針の音の広がる小正月
屋久杉の木目細かき大西日
御宸筆たちまち…
-
田島和生『句集 天つ白山』(角川学芸出版)より
2020.10.15
-
2015年。
「雉」主宰。第3句集。
雪撥ぬる笹や先生癒え給へ
山羊繋ぎ一番草を取りゐたる
読始湯川博士の天才論
寄り添つて地に影ひとつ寒雀
バイオリン大ひまはりへ弾く子かな
あふ向きに死にゆく蝉へ蝉時雨
新藁の匂ふ…
-
鷲谷七菜子『句集 晨鐘』(本阿弥書店)より
2020.10.12
-
2004年。
「南風」主宰。第7句集。
寒月のいつのぼりゐし高さかな
声出さぬひと日の果の大嚏
満面に青葉の照りをゆるしけり
青梅雨の大き一枚ガラスかな
机ひろく拭きそれよりの涼夜かな
落椿いまだこの世と見ひらける
…
-
羽田岳水『句集 和光』(角川書店)より
2020.10.09
-
平成8。
「燕巣」主宰。第2句集。
鍛冶町に鍛冶の亡びし鳳仙花
空返事して妻とをり弥生尽
リラ咲くや石壁厚き洋酒蔵
人好しの顔も親似や花南瓜
ひやかして過ぎし夜店へまた返す
剃刀の替刃さがすや桂郎忌
鴨の位置かはりし…
-
羽田岳水『句集 胡笳』(安楽城出版)より
2020.10.06
-
平成12年。
「燕巣」主宰。第3句集。
紅葉冷え鐘冷え神変大菩薩
一尊に供へて婆の亥の子餅
右顧嫌ひ左眄さらなし蟇
入峰足袋替へて未明の霧へ発つ
搾乳の牛のめつむる豆の花
少年の口笛が行く月夜茸
大姉名の子を凩に呼ぶ…
-
佐久間慧子『句集 夜の歌』(文學の森)より
2020.10.03
-
平成24。
「葡萄棚」主宰。第4句集。
老ふたりつかずはなれず春耕す
泰山木真理一つと咲きにけり
花高し蓮の水の暗ければ
あばら屋と見れば闘鶏飼はれけり
白桃やルノアルの彩ところどころ
梟のどちら向いても真顔かな
夏…
-
新田千鶴子『句集 小鳥来る』(本阿弥書店)より
2020.09.28
-
2012年。
「青嶺」同人。第1句集。
小春日や二階から道教へられ
盆踊上手な人を見て踊る
あたたかや片方たたむ驢馬の耳
胸かたき少女の裸像小鳥来る
柿右衛門眺めし柿に夕日かな
冬ぬくしぬくしと鳶の大きな輪
三日はや…