《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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小林榮子『句集 花すだれ』(玉梓発行所)より
2020.03.10
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令和2。
「玉梓」同人。
九十歳励まし合へる御慶かな
柊を挿しをり母のせしやうに
悲しみは越えねばならず冴え返る
雪混じりなる洛北の春時雨
水かけてやる墓碑にゐる青蛙
切口の鏡のやうな水羊羹
鉾町の町家町家の宵明り
山…
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『現代俳句文庫6 茨木和生句集』(ふらんす堂)より
2020.02.22
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1992年。「運河」主宰。
屋根の雪掻きて地上に雪増やす
オーバーの胸雪まみれ逢ひに行く
一湾を揉めり冬浪押し寄せて
村十戸雪被て厚くつながれり
傷舐めて母は全能桃の花
教室にプールの水の匂ひ来る
峯行者雲の峰への…
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桂信子『句集 草樹』(角川書店)より
2020.02.12
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昭和61。
第7句集。
秋風を来て鼻筋の通る馬
傘立に傘がまつすぐ立つて秋
傘さしてまつすぐ通るきのこ山
山々や花咲くまでの遠景色
からうじて鶯餅のかたちせる
花のなか太き一樹は山ざくら
腕立ての遂に伏したる夏畳
昼顔…
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中田恒子『句集 木守』(ふらんす堂)より
2020.01.28
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囀りに弥陀は合掌もて応へ
老鶯や明治生れの語尾たしか
寒紅を刷きて病む身の隠されず
行く雁のまなうらにあり眠られず
立待の月上るまで厨ごと
ひらくよりはや旅ごころ春日傘
をりからの蝶も祓はれ地鎮祭
古きもの仕立て直…
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堀口星眠註『脚註名句シリーズ1-10 相馬遷子集』(俳人協会)
2020.01.20
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昭和59。
「馬酔木」同人。
冬を待つ河原の石のひとつひとつ
風邪の身を夜の往診に引きおこす
百日紅学問日々に遠ざかる
華やかに風花降らすどの雲ぞ
窓開けて湖は見えねど夜の辛夷
北窓をけふ開きたり友を待つ
顔痩せて青…
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『大島民郎集(自註現代俳句シリーズⅢ期7)』(俳人協会)より
2020.01.14
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昭和57。
馬酔木副会長。
山の萩見て来て庭の萩待たる
スケートのきほへば飛雪また飛雪
噴煙のたふれ雪渓よごれたり
子へ贈る本が箪笥に聖夜待つ
晩餐を待てば猟銃森に鳴る
御物展南京櫨のいろづけば
王朝もかくや青葉の渡…
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『皆吉爽雨集(自註現代俳句シリーズ1期3)』(俳人協会)より
2020.01.08
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昭和51。
ホトトギス同人。「雪解」主宰。
幹に手をかけゐて花のちりやまず
春愁のいとまなければ無きごとし
啄木鳥のこぼせるものの落ちもこず
頬燃えて自画像出来ぬ卒業す
をちこちのをちの良夜の森に靄
葉をたたむしぐ…
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水原春郎編著『秋櫻子俳句365日』(梅里書房)より
2019.12.31
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1990年。
毎日、その日の句を読むようにして今年も終わり。
数日まとめて読む読むこともありましたが365句を読了。
やはり、「冬菊」がいちばん。
来年は、一度読んだ『虚子に学ぶ俳句365日』を再度。
獅子舞は…
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山中麦邨『句集 鵄邑(とびのむら)』(角川書店)より
2019.12.26
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平成6。
「七曜」「運河」「天狼」「圭」同人。
第1句集。
感心しました。
蜥蜴迅く走りて何のあてもなし
木に喰込む兜虫の爪引離す
新緑の動物園に馬臭勝つ
学校の長き廊下の夏休み
月に掌を差出し何を賜りし
蟷螂の前半身…
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岡崎鶴子『句集 月日貝』(真生印刷)より
2019.12.20
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平成13。
「霜林」「風雪」同人。第3句集。
夫帰るまでを灯さず月の椅子
啓蟄や期日重なる誘ひ文
わが窓に空もどりくる柿落葉
百済野に孤影の長き秋思仏
土間開けて梅の風来る藍の華
常濡れの土間冴返る藍濯ぎ
紅梅の雨を…