《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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村越化石『句集 端坐』(濱発行所)より
2018.11.26
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昭和57。
濱同人の著名な俳人。
盲目ということで、杖を題材にしたものなどが多い。
端居ややさびし濁世と離るるは
聖堂の大き涼しさ神ひとり
片蔭を正して一基一基の墓
幹幾つ触れ来し夏を惜しみてぞ
よき事のつづきのご…
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三宅美穂『句集 名医』(本阿弥書店)より
2018.11.15
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1994年。
「渦」同人。
第4句集。
古酒かたむけアンドロメダ大星雲
寒卵つるりと飲んで逢ひにゆく
春疾風思はぬものを運び来し
水中へ階段つづく朧月
亀の子に遊んでもらつてゐる晩年
ちぬ釣りの一人に深い昼がある
言霊…
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西谷剛周『句集 斑鳩』(幻俳句界)より
2018.11.06
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1997年。
「幻」主宰。
鉄棒の両手の中の鰯雲
除夜の鐘撞く右腕に子の重み
冬かもめ舞えり造船所の余白
冬の月女の声の父子家庭
酔眼の左右がにじむ冬銀河
風花や墨絵の仁王動く刻
カレー皿キュンと鳴る啓蟄の風
花冷えの…
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『津田清子集(自註現代俳句シリーズⅢ期21)』(俳人協会)より
2018.10.30
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昭和57年。
「沙羅」主宰。
私の結社の主宰の先生でもあります。
字余りのものが多く、すっと入ってこないのも多く。
キリスト教系の句も。
しかし、さすがと唸らされる句も多く。
ヴェール着てすぐに天使や聖夜劇
力一ぱ…
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桂信子『句集 彩(あや)』(ふらんす堂)より
2018.10.25
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1990年。
「草苑」主宰。
著名な俳人の第8句集。
あとがきにもあるように、白を詠んだ句が多い。
前半に好きな句が多かった。
閂をかけて見送る虫の闇
白菊や一天の光あつめたる
りんご掌にこの情念を如何せむ
逢ふとこ…
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岩城久治『句集 秋謐』(富士見書房)より
2018.10.22
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平成7年。「参」主宰。
『春暉』『炫夏』と来ての第三句集。
タイトルは硬いが、どの句も難解なものはほとんどありません。
しかも日常がよく描かれていて、病気の奥さまのラブレターの一面ももつ。
頭を抱えずに読めて…
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山口誓子句集『新撰 大洋』(思文閣出版)より
2018.10.06
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17句集目に当たる山口誓子の遺句集。
本人が亡くなってからなので自選ではない。
614句が収まる。
青田波にも寄せる波返す波
大佐渡の青嶺はすべて海に落つ
一枚の雪を敷きたる美濃尾張
死者の山生者の通る寒き道 (王…
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中也・太宰・心平・夢二ー初版・再版
2018.09.30
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台風が来るようで来ないようで。
預かりものをいくつか紹介します。
中原中也『在りし日の歌』(創元社)
昭和13年の再版。
後記が切ないですね。
原稿を小林秀雄に託して郷里の山口へ帰ると。
出版の日の目を見ずして、…
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荒木かず枝句集『真埴』(邑書林)より
2018.09.28
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2018年。
「鷹」月光集同人。
「月明のふくろふ骨を吐きにけり」はどの方も絶賛で、私もよい句だと思う。
ただふくろうと一緒に暮らしているので、骨を吐くのを見たことがない。
実際はペリットと呼ばれる骨を含めた…
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櫻井ゆか句集『いつまでも』(ふらんす堂)より
2018.09.27
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2010年。「雷魚」同人。
八月十五日に代表されるように、戦争を詠んだ句が多く、それらが新鮮に詠まれている。
それに対し、口語俳句やリズムのよい明るい句もあってバランスがよく取れていると思います。
春爛漫匂…