《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
-
佐久間慧子『文字盤』(角川書店)より
2020.09.25
-
平成8。
「かつらぎ」同人。第3句集。
鷹高しさらに上なる点も鷹
クリスタルグラスの虜水中花
灯を洩らす郵便局も雪囲
白々と仔馬のための柵を塗る
日除艇愛生園へ向けて発つ
聖五月一賄婦たらんとす
はんざきの棲む夜の湖…
-
斎藤梅子『句集 太初は海』(文學の森)より
2020.09.22
-
平成17。
「青海波」主宰。第6句集。
笙の音のこころごころに夜の秋
火祭の火屑いくたび踏むも旅
弁天は極彩色ぞ野分立つ
すすまばや雪片あまた襲ひくる
にんげんを演じきつたる汗の玉
伏流のここに出でたる濃あぢさゐ
-
中尾杏子『句集 冬の陽炎』(本阿弥書店)より
2020.09.20
-
1997年。
「沖長崎」主宰。第4句集。
どの木からともなく蝉の木となれり
鳥わたる麺麭屋ま白のトレー積み
大学は僧院に似て白木槿
衣被剥いてをんなの聞き上手
別館へ曲りくねつて湯ざめせり
些事よぎる胸もと日傘ひら…
-
堀川草芳『句集 蒼き闇』(扉俳句会)より
2020.09.18
-
平成19年。
「扉」主宰。第3句集。
寒天の風の軽さに干し上がる
つぎつぎに日射しを掬ひつばくらめ
四方より眺めて終る松手入
凍滝の力こもりし白ならむ
囀に力の満つる桂の木
空蝉の風にもがきし形に落つ
木守柿信濃の空…
-
星野麥丘人『句集 燕雀」(角川書店)より
2020.09.17
-
平成11。
「鶴」主宰。第4句集。
元興寺塔阯の冬日だまりかな
帽子脱ぐ二人静にかがむため
筍飯炊くことけふのすべてなり
薔薇赤しそのほかのこと考へず
昼酒もすこし女ら鱧食うて
くつさめの夫唱婦随といふべかり
初夢に…
-
寺田良治『句集 ぷらんくとん』(ふらんす堂)より
2020.09.14
-
2001年。
「船団」所属。
囀りにきき耳立てるごはん粒
みずうみのかたちに眠る五月の胃
青蛇の土手をすべつてゆく娯楽
数学は冷たくて好き枯山水
てのひらは元あしのうら山笑う
しばらくは砂遊びする蕨餅
大いなる鳥籠の…
-
渡部節郎『句集 転舵の渦』(本阿弥書店)より
2020.09.11
-
2009年。
「沖」同人。第1句集。
若葉風抱へ気功の型うごく
咲くといふ白木蓮の解けやう
拗ね心あるやも端居して在す
鯛焼と判る温みを渡さるる
裸木と違ふ肌して立ち枯るる
あの時はあれでよしとす朧かな
省くものなく…
-
名村早智子『句集 参観日』(本阿弥書店)より
2020.09.06
-
1998年。
「築港」同人。現「玉梓」主宰。第1句集。
こういうふうに句集になると、詠まれた子どもは決してグレることはないだろう。
大学と城のある街夕焼けて
日本を詠んだとは思うものの、ドイツのハイデルベルク…
-
中野湘舎『句集 五叉路』(本阿弥書店)より
2020.09.04
-
2014年。
「春風」同人。第1句集。
人日の戦略会議始まりぬ
雪積むと母の便りの短くて
野辺送りすませて薄き蜆汁
巨人戦の切符出てきし曝書かな
商売の相手も夏に負けてをり
これがかのローレライなり船遊び
雨止めば遅…
-
橋本多佳子『句集 命終』(角川書店)より
2020.09.02
-
昭和40年。
第5句集であり遺句集。
老いの顎うなづきうなづき紙を漉く
紙漉のぬれ胸乳張る刻が来て
露晒し日晒しの石桔梗咲く
「脚下照顧」かなぶんぶんが裏がへり
落日に群衆が透く川施餓鬼
蒟蒻掘る尻がのぞきて吉野谷
…