《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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岡田陽子『句集 子ら』(私家版)
2021.02.12
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2003年。
「七曜」同人。第1句集。
独楽まはす兄に向ひて這ひ出せり
這ひ這ひの嬰に団栗をころがせり
玩具箱にどんぐりも入れおやすみなさい
風光る陶芸の森陶の椅子
子を逃げて蝸牛葉裏にひそみをり
手の中に螢捕らへ…
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大牧広『句集 冬の駅』(本阿弥書店)より
2021.02.05
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2009年。
「港」主宰。第6句集。
としよりをまだやつてゐる人に雪
裸木の裸の終り近づきし
さうめんをすする遠くに空母置き
エレベーターに人が棒立ち冬の底
さくら暮れ溝口健二的世界
祭笛巧みすぎたる憾みあり
盆三日…
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内山花葉『句集 沸点』(ふらんす堂)より
2021.01.29
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2018年。
「沖」同人。第1句集。
木々わつと叫びて芽吹く爆心地
桜九十五度目の母と小さき旅
鬼灯やいま逢はねばと汽車に乗る
行く雲のはやさに稲を刈り進む
霧籠めて滝のとどろき失せにけり
新雪の一歩一歩に浮力生る
…
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米澤光子『句集 吹いてやろ』(本阿弥書店)より
2021.01.20
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2001年。
「火星」同人。第1句集。
孕猫月のひかりの水を飲み
寒卵こつんと割りて今朝ふたり
拗ねてゐる子の足見ゆる秋簾
背を向けて何燃す母や凌霄花
元日や秤の上に嬰泣きぬ
エプロンに貰うて来たる子猫かな
恐竜と子…
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池田理代子『歌集 寂しき骨』(集英社)より
2021.01.19
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2020年。
「塔」会員。第1歌集。
・父と戦争
行く先も知らぬ船底に命なきものと俘虜らは覚悟決めしか
「母さんを頼む」と洒落たことを言う「おう、任せとけ」と私も応じる
・母
何もかも母の敷きたるレールなりき 漫画…
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滝口滋子『句集 ピアノの蓋』(ふらんす堂)より
2021.01.14
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2018年。
「いには」同人。第1句集。
青年の鋭角の顎風薫る
全力で走りたる夢桜桃忌
ふとん屋の軒に顔出す燕の子
演劇のちらしに子の名新松子
揚羽蝶風にとまつてゐるやうな
神輿追ひ太平洋へ出でにけり
椿落つ大地に印…
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齋藤朝比古『句集 累日』(角川書店)より
2021.01.08
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2013年
「炎環」同人 「豆の木」副代表
第1句集
青空へ巣箱の闇を掛けておく
花火見し目にシャンプーの滲みてをり
まなこ閉ぢ嚏の支度してをりぬ
寒泳の髪乾くまで獣めき
雛の段月へ続いてゐたりけり
ピクニック大き日向…
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野頭泰史『句集 空気』(本阿弥書店)より
2021.01.03
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2014年。
「貂」同人。第1句集。
立春の馬全身で嘶けり
山羊の目の赤らんでをり下萌ゆる
霾や隣国高度成長期
龍天にフォークに絡めスパゲティ
蜷の道引きずつて蜷歩みけり
夜桜や川一筋の鋼色
山羊繋ぐ紐の伸びゆく春日…
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猿橋統流子『句集 鬼嶽』(富士見書房)より
2021.01.01
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昭和63。
「海門」主宰。第3句集。
三輪の神長谷の仏と月分つ
歯を抜きしあとの空洞返り梅雨
師の荼毘を待つ間の蝉をしんと聞く
嫁が来て村賑はへり神の留守
舞ひ上る羽子の紅白塀の上
吊橋に繋がれ眠る山二つ
雪に燭点す…
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小森邦衛『句集 漆榾』(角川書店)より
2020.12.27
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2016年。
「藍生」会員。第1句集。
あたたかねと言つたきりなる夫婦かな
朝飯を食うてまた寝る残暑かな
寒雷や能登を離れて能登のこと
地虫出て月の雫に濡れむとす
暑いねと言へば涼しく振り向かれ
素手素足加へて素顔…