《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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清水余人『句集 香日向』(飯塚書店)より
2022.01.02
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令和2。
「田」編集長。第1句集。
単線の一駅ごとの桜かな
黄昏に人の溶けゆく寒さかな
夏掛や母たひらかに寝ておはす
睡蓮の池の明るき美術館
冬銀河笑顔で帰るために泣く
母撮らば遺影にせよと花の下
初日いま海離れむと…
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黒田淑子『句集 絵筆』(玉梓発行所)より
2021.12.29
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令和3。
「玉梓」同人。第1句集。
異国より帰りて花の淡きかな
母の日の母の絵を見に帰りけり
病床の夫に若葉の風通す
サングラス掛けて歩幅の広がりぬ
三世の動き出したる原爆忌
散紅葉掃かれぬままに砕けゆく
正月の母や…
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大輪靖宏『句集 月の道』(本阿弥書店)より
2021.12.28
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2019年。
「輪」主宰。上智句会代表。第5句集。
弥勒仏春を味はふ頬の指
駅の恋芽生え五月の通学路
水澄めば野に新たなる風生まる
燕去り豪農土間を閉ざしけり
紙漉きを守りて寡婦の腕太し
娘から他人行儀の年賀状
遠野…
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大場梅子『梅子句集』(角川書店)より
2021.12.21
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2020年。
「古志」同人。第1句集。
初節句百年ぶりの男の子かな
一歳のままの姉なり墓洗ふ
糸とんぼ風にさらはれそれつきり
ひと泳ぎして蛇穴に入りにけり
合掌をとけば小春の朱の鳥居
わが憂ひ蛍袋を出つ入りつ
席題の…
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高根照子『句集 ティー・エンジェル』(ほくめい出版)
2021.12.14
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平成16。
「苑」同人。
初春の鏡に若さ訊ねけり
お年玉ママに預けて無邪気なる
終点に客出迎への雪だるま
初心者のスキー止まらぬ叫び声
スケートの痣あちこちに風呂上り
山焼や北斗七つを染めて果つ
野を焼くを見し夜の夢…
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平松良子『句集 天恩』(本阿弥書店)より
2021.12.09
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1990年。
「雲母」同人。第2句集。
稲架木解くひとりの音の湖国かな
枯れてなほ枯るるもの音鎌倉は
梅挿してあり梅の木の下の墓
日論は睫毛に重し蕗の薹
巨木より苗木に春の隣りをり
初蝶や艦を真横に見てをれば
籾蒔い…
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波戸岡旭『句集 父の島』((ふらんす堂)より
2021.11.28
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1989年。
「沖」同人。第1句集。
殺し場となる幕が開き蛙鳴く
芒野を行くやたやすく道生まれ
むんむんと吾子の匂ひの蒲團干す
島の母起きる時刻の冬の星
枯山のすぐふところに突き當る
まづ言葉あたためてをり朝焚火
蓬…
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来住野臥丘『句集 日雷』(霧の音発行所)より
2021.11.23
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平成4。
「寒雷」同人。第3句集。
松飾立ちて図書館休館日
山ざくら奥多摩になお奥ありて
蟻の列の吾も一匹となり続く
折れし茎皮でつながり曼殊沙華
かぎりなく落葉流れ来流れ往く
冬霧や吐かねば怒り溜まるのみ
降りはじ…
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渡辺政子『句集 修二会』(俳句アトラス)より
2021.11.13
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令和1。
「春耕」「晨」同人。第1句集。
北窓を開きミシンの油差す
新涼の森へ押しゆく乳母車
産み月の牛に大型扇風機
重文となりたる東司小鳥来る
打ち鳴らす鐘に修二会の火の粉とぶ
ひとときを水鉄砲の標的に
熱の子に白…
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奥村鷹尾『句集 朱雀春秋』(文學の森)より
2021.11.06
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平成20。
「京鹿子」同人。第1句集。
鞦韆や虹より高きとき得意
鹿走る朝霧の野の神代めく
四方の気を圧して泰山木ひらく
拾ひ進む木の実やなほも降る中に
ずしり冷たき書をとき蔵書刻印す
枯苑となりたる日々の作務無沙…