《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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加藤国子『句集 能面』(角川書店)より
2022.03.10
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2015年。
「蒼穹」同人。第1句集。
コスモスの丈を違へて瓶にさす
山眠ることの遅さよ午の年
能面の奥より響く梅雨の声
天の川手枕をして読む源氏
薄墨に溶けたるごとき初夢や
初夢の駿馬は先を駆け抜けぬ
鉛筆を回す思…
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安達しげを『句集 からす唖々』(私家本)より
2022.03.02
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平成13。第5句集。
読初めやコミンテルンの崩壊史
落椿大地の鼓動聴くかたち
客容れてから風鈴の舌はしゃぐ
手を離れ手へ戻る子や青き踏む
扇風機生くるに飽きし如き音
眦に光るもの溜め角切らる
交響曲終り師走のシャン…
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音羽和俊『句集 春の雪』(草樹俳句会)より
2022.02.22
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平成25。
「草苑」同人→「草樹」会員。第1句集。
マフラーの結び目太く少年来
ふらここの蹴上げる空の軽さかな
初恋も失恋も海ソーダ水
葉桜となって漢の空となる
シャガールの羊と冬の午後に居る
あきらかに梟こちら見…
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川上弘美『句集 機嫌のいい犬』(集英社)より
2022.02.20
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2010年。第1句集。
はつきりしない人ね茄子投げるわよ
C難度宙返りせる春のたましひ
初夢に小さき人を踏んでしまふ
少しだけ飛ぶにはとりやゐのこづち
目覚むれば人の家なりチューリップ
おたまじやくし諸手に掬ふこ…
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藤埜まさ志『句集 木霊』(角川書店)より
2022.02.17
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2018年。
「森の座」同人。「群星」代表。第3句集。
嫁ぐかの柩の母の花衣
籐椅子に坐すや亡夫の押し返す
そこここに爆ずるゴーヤや敗戦日
枯れきつて骨うつくしき欅かな
麓まで垂るるその列初詣
冬耕も詩嚢も天地返し…
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白鳥竣『句集 陽炎』(卯新山文庫)より
2022.02.13
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昭和52。
「寒雷」「陸」同人。第1句集。
子の頭撫づ雛の髪よりやはらかし
乳房躍らせ盥に春の水を張る
風しづむたび雛罌粟は蝶を飛ばす
ラムネ飲む壜の底より白鳥座
いぶかしみ金魚近寄る無精髭
天の川ひとは音たて尿り…
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矢成緑風『句集 月下香』(本阿弥書店)より
2022.02.05
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1993年。
「万蕾」同人。第1句集。
朝より灼けて坑夫の墓百基
秋天を突く噴水の力づき
雪蹴つて負けの嘆きを隠さざる
肩に手を置かれてゐたり虫時雨
去年今年なく作業衣をつけにけり
秋晴や電柱の影壁に折れ
群羊に重な…
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田村幸江『句集 船遊び』(本阿弥書店)より
2022.01.29
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1992年。
「草苑」「航標」同人。第1句集。
頬の傷皺となりたる終戦日
露座仏にほど近くゐて桜餅
鰤の頭をたたき切つたる光かな
風呂吹きの舌にくづれる旅疲
三日はやうねりに向ける舳かな
春立ちぬ仁王の足の裂け目に…
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松原雅子『句集 紅枝垂』(本阿弥書店)より
2022.01.16
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1991年。
「草苑」「航標」「海流」同人。第1句集。
生国や藁の匂ひのつるし柿
オペラグラスを夫と互に初芝居
鶏小屋の敷藁かわく涅槃変
昼寝覚夢は五尺の母のこと
婚の荷の遠ざかりゆく袋掛
永き日の四時で止まりし大…
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河野美千代『句集 国東塔』(コールサック社)より
2022.01.06
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2020年。
「沖」同人。第1句集。
冬花火果て群衆に気づきたる
還暦の未だ夕焼ほど闘志あり
北風や仁王の眼こぼれさう
夏よもぎ門だけ残る校舎跡
もろもろの管抜き去つて死者涼し
爪立ちを覚えたる子に天高し
お降や音に…