《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
-
阿波野青畝『句集 春の鳶 改訂版』(白夜書房)より
2022.07.02
-
昭和55。
「かつらぎ」主宰。第2句集。
お遍路の合掌ながく且つかたく
雲海に指の穴ほど日本海
彼処焼け此処のこる街卒業す
解夏の門斯くも大きく開かれし
北窓を開け父の顔母の顔
風花の我より君に逃ぐるあり
足音が固ま…
-
平畑静塔『句集 栃木集』(角川書店)より
2022.06.26
-
昭和46。第3句集。
桃の花こぼれし死後の長廊下
太宰忌の支線岐れて郷に入る
としよりの後手恐き稲雀
看護婦は春蚊捕へて血を見せず
母達や数珠繰るごとく栗を選る
天蓋に八面玲瓏大ざくら
前足の手をつきあはれ雪を這ふ
…
-
細見綾子『句集 曼陀羅』(立風書房)より
2022.06.24
-
昭和53。
「風」同人。第6句集。
白鳥はおほかた眠る白鳥湖
白鳥に到る暮色を見届けし
梅を見て空の汚れのなきをほむ
牡丹に雨の荒れざまのこりたり
奈良大路洗ひ流せし大夕立
雲の峰一言主の森に生れ
雲ふるるばかりの花…
-
秋元不死男『句集 甘露集』(角川書店)より
2022.06.14
-
昭和52。
「氷海」主宰。第4句集。遺句集。
禁書冴ゆ赤鉛筆の削り粉も
一面の霜種牛が床を蹴る
殺されて流れきし蛇長すぎる
七夕や履いて石噛む妻の下駄
瀬を跳んで青年櫛を落す夏
頁繰る音も別れに似て冴ゆる
狂院のどこ…
-
宇佐美魚目『句集 天地存問』(角川書店)より
2022.06.13
-
昭和55。
「青」同人。第3句集。
蚊のこゑや家はなれゆく父の骨
塗畔や外より家の内冷えて
木に干して魚籠も衣も春の果
一点の日かげもあらず草刈女
掛稲の露の垣なす丹波かな
糸流す蜘蛛の顔あり花御堂
落栗のいきなり水…
-
磯田富久子『句集 菊川』(狩俳句会)より
2022.05.25
-
平成11。
「狩」同人。第1句集。
身のどこか鈴の音して春着の子
塾の子のポケットに垂れ独楽の紐
落ち凧のいやといふほど地を打ちて
蓮枯れて茎のはがねのごとき反り
ヒロインと同名われは着ぶくれて
太陽に向きたんぽぽ…
-
飯島晴子『句集 春の蔵』(永田書房)より
2022.05.21
-
昭和55。
「鷹」同人。第3句集。
箱庭の草心外にそよぎをり
狡猾に波立つてゐる冬の池
人とゆく野にうぐひすの貌強き
親友や螢の池をあひへだて
大章魚を愁のごとくさげてをり
月光の象番にならぬかといふ
-
飯島晴子『句集 朱田』(永田書房)より
2022.05.19
-
昭和51。
「鷹」同人。第2句集。
韮一本われの眼を扇ぐなり
泊船に真近く夏の唇とほる
夏蜜柑別のひかりに人坐る
子を産んで射干の朱を見て居りぬ
冬の枝はなれて熱き赤子擁く
紅梅のなかに入つてゆく眼光
-
木田千女『句集 お閻魔』(角川書店)より
2022.05.16
-
平成20。
「天塚」主宰。「狩」同人。第5句集。
兜太派も狩行派もゐて初句会
行き過ぎかいや生き足らぬ雑煮餅
酒きらひ男もきらひ白浴衣
粥すすり涙もすすり十夜婆
矢一本持つ神将や冬はじめ
奥祖谷の目も鼻もなき土雛
月…
-
楠橋かずえ『句集 星今宵』(狩俳句会)より
2022.05.14
-
平成11。
「狩」同人。第1句集。
若者に付かず離れず山登る
けが人の笑ふ訓練震災忌
ポットの湯捨てて退院年の暮
何をしに二階に来しや花火の夜
種を採る大向日葵の首抱へ
階下より鍋ごと届く夜食かな
磯遊び何かにつけて…