《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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乕谷芳子『句集 氷室の桜』(文學の森)より
2023.04.06
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平成25。
「運河」同人。第1句集。
踊笠取れば涼しき目鼻立ち
抜刀の勇は土足菊人形
梅固し梅まつりの旗立ちたれど
白塗の楽屋まる見え村芝居
漁に出てゐたる舟屋に日脚伸ぶ
春愁や月光菩薩目蓋ふせ
轟ける瀑布に手摺持ち…
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龍野龍『句集 雪つぶて』(文學の森)より
2023.04.01
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令和2。
「浮野」編集長。第2句集。
雪降つてもののかたちを露はにす
手のひらに猫の子の腹立ててをり
校庭の面の広がり雷兆す
白木蓮や比叡を雨の上がりゆく
おほかたは水の重みの金魚買ふ
外套の重きを吊す父の部屋
押し…
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鳴門奈菜『句集 イブ』(琴座俳句会)より
2023.03.27
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昭和60。
春昼の白足袋歩く形に脱がれ
大空に大鳥居あり春の風
根っからの善人憎し葱坊主
にんげんを楽しんでいる薄氷
今年また蒔き忘れたる瓜の種
春の闇傷の手首をしたたりし
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長石彰『句集 記念樹』(本阿弥書店)より
2023.03.23
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2023年。
「玉梓」同人。第1句集。
教へ子の教師目指すと初便り
母の雛娘の雛に孫の雛
入学児兄の教室探しをり
母の日の暮れてエプロン外す母
蝸牛すぐにごめんと言へぬ子よ
熱帯夜つけつぱなしのテレビジョン
子に配る…
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渡辺過雁『句集 鷹柱』(文學の森)より
2023.03.21
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平成24。
「七曜」「天佰」「煌星」同人。第2句集。
逸れてばかり母のころがす大玉は
枯蓮は矢折れに折れて折れつくす
寒昴被災母子に灯を下さい
一団の桜一片づつ散らす
翔ぶことはなし船虫の逃げ足は
身二つに折れし大…
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本田俊子『句集 光のうつは』(文學の森)より
2023.03.14
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平成25。
「塊」同人。第2句集。
ゆきずりに櫨のもみぢのひとひらを
たんぽぽや臍ぽかぽかとしてきたり
秋蛍闇の柱をのぼりゆく
鶴帰る空を貫く道のあり
いちじくを割れば胎蔵曼荼羅図
虚子の忌や晩年にして見ゆるもの
三…
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森節子『句集 稲の花』(東京四季出版)より
2023.03.06
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平成21。
「きりん」会員。第一句集。
夜なべする母の背中にもたれけり
花冷や賽銭箱と募金箱
グランドに熱砂残して試合果つ
熱の児に小さき氷片含ませて
囀やヒットの続く草野球
遠き日の足裏で探る蜆取り
秋まつり町会長…
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福田千代子『句集 表裏一体』(文學の森)より
2023.03.03
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令和5。
「築港」「玉梓」同人。第1句集。
青春の坩堝となりしキャンプ場
塩鮭の口より塩のこぼれをり
植木市土の匂ひを買ひにけり
木下闇並ぶ木曽塚巴塚
秋桜女らしさは死語となり
凍滝のどこかに水の音したる
一湾の落暉…
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岸田稚魚『句集 花盗人』(立風書房)より
2023.02.20
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昭和61。
「琅玕」主宰。第6句集。
初雲雀なりやと腰を浮かしたる
母の日の母きよの名のまたはるか
雹跳ねてをりその他の音のなし
終戦日といふ一日を人のみな
陽炎の中にわがをり城消えて
居酒屋の扉が開いてゐて春の月
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成井侃『句集 素戔嗚』(角川学芸部出版)より
2023.02.16
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2014年。
「対岸」同人。第2句集。
風よりも軽くかまきり生まれけり
反転のあとの攻勢稲雀
ゆつくりと全体移動鰯雲
冬瓜に大愚の相のありにけり
栄螺籠栄螺満たして隙だらけ
荒神輿去りて酒の香ただよへり
退屈な金魚す…