《古書・古本の出張買取》 京都・全適堂 の日記
-
飯島晴子『句集 朱田』(永田書房)より
2022.05.19
-
昭和51。
「鷹」同人。第2句集。
韮一本われの眼を扇ぐなり
泊船に真近く夏の唇とほる
夏蜜柑別のひかりに人坐る
子を産んで射干の朱を見て居りぬ
冬の枝はなれて熱き赤子擁く
紅梅のなかに入つてゆく眼光
-
木田千女『句集 お閻魔』(角川書店)より
2022.05.16
-
平成20。
「天塚」主宰。「狩」同人。第5句集。
兜太派も狩行派もゐて初句会
行き過ぎかいや生き足らぬ雑煮餅
酒きらひ男もきらひ白浴衣
粥すすり涙もすすり十夜婆
矢一本持つ神将や冬はじめ
奥祖谷の目も鼻もなき土雛
月…
-
楠橋かずえ『句集 星今宵』(狩俳句会)より
2022.05.14
-
平成11。
「狩」同人。第1句集。
若者に付かず離れず山登る
けが人の笑ふ訓練震災忌
ポットの湯捨てて退院年の暮
何をしに二階に来しや花火の夜
種を採る大向日葵の首抱へ
階下より鍋ごと届く夜食かな
磯遊び何かにつけて…
-
柳瀬旬『句集 旅びと』(狩俳句会)より
2022.05.08
-
平成11。
「狩」同人。第1句集。
寒紅をさしてをさなきことを言ふ
ちぎり絵の糊のはみ出し春隣
もてなしの冷房強くうちとけず
皓き歯のいよいよ皓しサングラス
底履きの厚きゴム底小鳥来る
背凭れのなき民具椅子春愁ひ
豊…
-
木田千女『句集 白炎』(本阿弥書店)より
2022.05.04
-
1998年。
「天塚」主宰。「狩」同人。第6句集。
ペン先で人めつた切りペン始
ひなあられ十粒添へられ患者食
夏場所や化粧まはしに星条旗
出目金を買うて龍宮城も買ふ
少年の獄舎に高き鯉のぼり
敬老といふ一番にいやな…
-
浅井陽子『句集 狐火』(北溟社)より
2022.05.01
-
平成14。
「運河」「晨」同人。第1句集。
膝揃へ直して子より御慶受く
金亀虫飛び映画ロケ撮り直す
岩を動かして半裂見せくれし
遭難の追悼といふ登山かな
石鯛の魚拓とりゐて墨足らず
どぶろくの瓶レッテルを貼りをらず
…
-
藤田柊車『句集 中州』(狩俳句会)より
2022.04.29
-
昭和62。
「狩」同人。第1句集。
初鏡座して鏡の奥も拭く
いわし雲佐渡と越後をつなぐもの
筆の穂を正して経を写し初め
磨崖仏見上げ遍路の息正す
祖父の墓洗ふ一升瓶の水
国宝の鐘の撞木に蝸牛
髪の冷え己が髪とも思はれ…
-
山口超心鬼『句集 誓子星』(角川書店)より
2022.04.14
-
平成8。
「鉾」主宰。第3句集。
明日は明日浮浪者今を日向ぼこ
葬を待つ河鹿の声に耳すまし
蜂を追ふ日頃使はぬ箒にて
墓に挿す供華に直ちに蜂が来る
眼に留めし福娘より笹を受く
花の灯が消えて一山真つ暗に
ちちろ鳴く城…
-
髙崎武義『句集 榛』(本阿弥書店)より
2022.04.10
-
1994年。
「狩」同人。第3句集。
雨を呼び雨に呼ばれて枝蛙
籐寝椅子きしませわれをとりもどす
釜の底鳴らす越前蟹の爪
寄鍋の火を消してより座の乱れ
網棚に一物もなし初電車
老鶯の声を重ねて二尊院
いなづまやおくれ…
-
福永法弘『句集 福』(角川学芸出版)より
2022.04.04
-
2014年。
「天為」同人、「石堂庵」庵主。第3句集。
風葬の島の南風に吹かれけり
過日とは過てる日か古暦
朝市のまづは雪掻く竹箒
涅槃図の象に隠れて何かゐる
無惨やな醤油の沁みる白魚の目
夏空を漕ぐかに母のミシン…