《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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渡辺四日女『句集 一笛』(ふらんす堂)より
2022.12.03
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2007年。
「狩」同人。第2句集。
陶房のちらかる中の壺に梅
水たんと貰ひし雫つり忍
利かぬ気のおでこに一つ天瓜粉
えりぬきのものを手向けて今日の月
明けきらぬうちに空つぽ狩の宿
火事跡のホースをまたぎ立ち話
口伝…
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右城暮石『句集 虻峠』(角川書店)より
2022.11.29
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昭和55。
「運河」主宰。第3句集。
外燈の下に入り来て雪払ふ
雨待てり水の無き田を耕して
下界より見し白さなし雪渓は
深き雪犬踊り入り踊り出づ
天井に貯へゐたる牡丹雪
吾に向き向きを変へざる蟇
泳ぎ着き少年歩く大股…
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阿波野青畝『句集 紅葉の賀』(かつらぎ発行所)より
2022.11.26
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昭和37。
第4句集。
開帳や大きな頬の観世音
牡丹百二百三百門一つ
端居して太閤の覇を思ひけり
蓮破る雨に力の加はりて
馬酔木野やかしこ法相ここ華厳
個展見るオーバーの客立ち塞ぐ
鬼は外主はなかなか帰宅せず
わが袖に…
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金久美智子『句集 くれなゐ深き』(角川書店)より
2022.11.15
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2012年。
「氷室」主宰。第6句集。
つま先を落葉に沈め逢ひに行く
雪女詠みしは疾うにみまかりぬ
蝋梅の咲き満つ土間や窯始
独楽の紐垂らして兄に従へり
御神渡りまだと言ひをる寒さかな
赤松の向う黄砂の弓ヶ浜
気忙し…
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浅井陽子『句集 紅鏡』(角川書店)より
2022.11.06
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平成24。
「運河」「晨」「鳳」同人。第2句集。
清水の舞台の下の恋の猫
退職の一日目なる籐寝椅子
大和より河内へ月の峠かな
石庭の砂のさざなみ十三夜
鯖街道一の難所に鹿の声
子規没後百年の年惜しむかな
蜷の道途切れ…
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杉江佳子『句集 春の露』(ふらんす堂)より
2022.10.29
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1990年。
「泉」同人。第1句集。
門松の笹のさやさや明けにけり
昼顔に線路大きく曲りけり
少年の扇がざせば鉾動き
束の間や鉾解きてまた人流れ
しみじみとよき正月と夫の言ふ
初夢の佛に會ひし蟹満寺
寒卵けふが始まる…
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村上光代『句集 夏空』(東京四季出版)より
2022.10.25
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2022年。
「玉梓」同人。第1句集。
天井にうねる双龍淑気満つ
撫牛の仔は親見上げ梅見上げ
竹の皮脱ぎ散らかして伸びゆけり
連山の消ゆる卯の花腐しかな
流されぬやうに流れてゐる花藻
聞え来る祭囃子に乗りて家事
山頂…
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井上あや子『句集 紅梅』(ふらんす堂)より
2022.10.22
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2008年。
「狩」「天衣」同人。第1句集。
塾生の一塊となり初詣
案の定雨に崩れし牡丹かな
片蔭に貼りつくやうに人を待つ
炉話の芝居がかつてきたるかな
石庭の石の影のみある寒さ
雪吊りの八方へ気を弛めざる
嫁ぐ子と…
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小林たけし『句集 鹿』(狩俳句会)より
2022.10.15
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平成8。
「狩」「朱雀」同人。
白鳥を守るごとくに鴨の陣
白鳥を遠く見てをり襟立てて
海よりの風にもどされ揚羽蝶
飴玉で頬ふくらませ祭の子
白蓮の花ふくらます風の出て
震度一ありし夜の明け地虫出づ
蝮注意落石注意山開…
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l小室善弘編『正岡子規句集 鶏頭』(ふらんす堂)より
2022.10.10
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1998年。
五月雨やけふも上野を見てくらす
絶えず人いこふ夏野の石一つ
我が袖に来てはね返る螽かな
六月を奇麗な風の吹くことよ
行く我にとゞまる汝に秋二つ
漱石が来て虚子が来て大三十日
夏嵐机上の白紙飛び尽す
いく…