《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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伊藤多恵子『句集 二言』(本阿弥書店)より
2023.02.09
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2012年。
「泉」同人。第2句集。
先頭に嬰抱いてくる賀客かな
笹鳴へ夫は眼鏡をはづしけり
捨てたしと思ふ雛の恐ろしき
鱏の来て秋扇はたと止みにけり
溝蕎麦の動かぬ水の流れけり
粧ふ山眠れる山を帰りけり
夜空青くて…
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延寿寺富美『句集 大旦』(文學の森)より
2023.01.29
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平成23。
「白桃」同人。第2句集。
膝出しておしやまになりぬ更衣
亀の子のジタバタとして買はれけり
抱くことも少なくなりし日焼の子
夜濯の手より淋しくなりにけり
さみしくてまた雪降らす雪女郎
宿の子の宿の手伝ひき…
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川合民子『句集 春障子』(東京四季出版)より
2023.01.21
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平成9。
「松籟」同人。「沖」会員。
大根をごぼごぼと炊く風の夜
栗飯のほつこり炊けて嫁姑
鳥雲に二伸まである母の文
夏めくや女の白き土踏まず
瞑りて奈落見るごと髪洗ふ
大焚火指の先より輪に入りぬ
木曽は雪蔵にみその…
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黛まどか『句集 花ごろも』(PHP)より
2023.01.15
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1997年。
「月刊ヘップバーン」代表。
春の波恋に引き際ありにけり
初蝶の消えたるあたり草匂ふ
湖の面のひと揺れに発つ花筏
花冷のくちびるをもて黙らさる
芹摘の帰る帰ると言ひながら
バレンタインデーカクテルは傘さ…
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宇都宮敬子『句集 琴弾鳥』(ウエップ)より
2023.01.14
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2020年。
「鴫」「貂」同人。
第2句集。
曹達水シュワッと何か失へり
大皿の模様のやうに舌鮃
鎧ひたる騎士の風格夏館
踏んで脱ぐ水着に草の匂ひかな
隣国の文字まだ読めず冬銀河
数へ日や本は書棚を出でしまま
踏み入り…
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渡部有紀子『句集 山羊の乳』(北辰社)より
2023.01.08
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令和4。 「天為」同人。第1句集。
人日の赤子に手相らしきもの
夜店の灯にはかに玩具走りだす
秋ともし飛べない鳥の飛出す本
千本の影を整へ針祀る
聖夜劇天に吊りたる星あまた
卒業歌前のみを向き立尽くす
行く春や餡の重…
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渡辺花穂『句集 夏衣』(北辰社)より
2023.01.08
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令和2年。
「天穹」「銀漢」同人。
芽吹き初むこの木なんの木気になる木
電池切れの怪獣を抱く昼寝の子
破芭蕉切り取り線のあるやうな
生クリームの角が立ちたる天高し
蜥蜴出づクレオパトラの浴槽に
春の星ハープの余韻膨…
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渡辺四日女『句集 若松』(狩俳句会)より
2022.12.29
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平成3。
「狩」同人。第1句集。
喪の涙かくす日傘を斜めにし
許されて術後に吸ひし青みかん
薬臭の看護婦薔薇を嗅ぎゐたり
米うまい近江にあまた捨案山子
鉄打つを見てゐて同じ汗流す
医学書の五臓六腑を日に曝す
藁塚に声…
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大堀柊花『句集 増』(本阿弥書店)より
2022.12.19
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2002年。
「狩」同人。第2句集。
舞初や見えざる富士へ手をかざし
鬼女出でて火の強まりし薪能
くちびるをうるほせしのみ菊の酒
湯豆腐の角ふれ合うてそこなはず
恵方へと水上バスに人あふれ
灯を入れて涅槃哭く声よみ…
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藤田柊車『句集 望潮』(ふらんす堂)より
2022.12.13
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2007年。
「狩」「廻廊」同人。第2句集。
花篝城を影絵のごとくおき
囀りを四方より入れてマリア堂
胡桃割る怒りの力かりて割る
いさかひの相手もなくて啄木忌
ポケットベル鳴りて花野を引き返す
オリオンの胸へ一挙に…