《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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『大橋敦子集(自註現代俳句シリーズⅡ期8)』(俳人協会)より
2022.08.21
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昭和61。
「雨月」主宰。
生れたるのみのふるさと盆の月
日の匂ひある子の髪を洗ひやる
枯木中落つる月のみ色持てる
虹に立つ少女直ぐなる髪垂らし
ちる花に撮られゐる笑みつくりをり
降る雪に楽器沈黙楽器店
噴水に光と風…
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鷲谷七菜子『句集 水韻』(ふらんす堂)より
2022.08.18
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1990年。
「南風」主宰。第5句集。
映し得ぬ身の内側や水澄みても
わが独語水に沈みて秋の蝉
極寒の瀧音ひびき土不踏
枯れきつて水の匂ひの芦となる
月光を得しより川の奔りそむ
影のごと人去りゆけり氷り瀧
川幅が余す…
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『橋本鶏二集(自註現代俳句シリーズⅠ期10)』(俳人協会)より
2022.08.13
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昭和53。
「年輪」主宰。
ふる雪や機械しづかに鐡を切る
水馬はじきとばして水堅し
瀧風に巫女のあそべる巌かな
鳥のうちの鷹に生れし汝かな
菊の前静かにたまる落葉かな
冬濤の摑みのぼれる巌かな
秋燕の羽をたたみてなが…
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橋本鶏二『鷹の胸』(牧羊社)より
2022.08.05
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昭和56。
「年輪」主宰。第9句集。
書の稜(かど)の鋭きを愛せり桜桃忌
秋空に手をあてて手を書にもどす
藁塚にのせればすべる旅鞄
短日や返しにゆきし貰ひ猫
鳥雲に個人タクシー顔を出す
プリマドンナ氷河のごとき毛衣…
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加藤楸邨『句集 まぼろしの鹿』(思潮社)より
2022.07.31
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1967年。
「寒雷」主宰。第10句集。
乳児の声黴の中よりほとばしる
顎に汗怠けてゐるも楽ならず
薔薇の前牡丹の前と声かはる
薔薇見ては妻が詠む句をのぞきをり
柿出して巧みな論をぶちきりぬ
秋耕や牛のふぐりはきら…
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泉田秋硯『梨の球形』(牧羊社)より
2022.07.28
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平成3。
「霜林」同人。第2句集。
Tシャツの胸の横文字知らず着る
宿直の一人のための虫しぐれ
露天湯に女入るたび月融ける
皮むいて梨の球形掌にのこる
コスモスへ跳び込みし犬呼んでゐる
日本海より風が来て日本晴
伐る…
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飯田龍太『句集 忘音』(牧羊社)より
2022.07.17
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昭和44。
「雲母」主宰。第4句集。
風吹いて月よみがへる梅雨の町
バイブルは常に重き書夜の秋
秋の蝉まつはる入日解きがたし
落葉踏む足音いづこにもあらず
遺書父になし母になし冬日向
亡き母の草履いちにち秋の風
大根…
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富澤赤黄男『句集 天の狼(復刻)』(沖積社)
2022.07.17
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平成16。
第2句集。
冬波に向へばあつきわがめがしら
鶴渡る大地の阿呆日の阿呆
蝶ひかりひかりわたしは昏くなる
炎天の巨きトカゲとなりし河
鱗雲 流れ弾きて流れたり
蒼天のキンキンと鳴る釘をうつ
一輪のきらりと花が光…
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平畑静塔『句集 旅鶴』(遠星書館)より
2022.07.10
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昭和42年。
第2句集。
一本の鞭にて野火をただすなり
炭小屋に汚れて事を忘れる母
子の下宿さはれば物の強き凍
舟を漕ぐのけぞる方に花万朶
白障子までひとすぢに畝起す
花野より天に四足を駈けし犬
なき母の声あかぎれの…
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加藤楸邨『句集 山脈』(書肆ユリカ)より
2022.07.08
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1955年。
「寒雷」主宰。第2句集。
沈黙の金、玉蟲と夕焼と
唖蝉や鳴かざるものは暑くるし
黄金蟲灯に酔ひ兜蟲は攀づ
黴の中言葉となればもう古し
石の蝶金色すべく没日まつ
しぐれをきし額をもつて熱診られ
落葉何かに…