《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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松井努『句集 手拭の糸』(ふらんす堂)より
2023.07.06
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2023年。
「橘」同人。第1句集。
クリスマス電車一両握り寝る
花杏その名の吾子と樹を見上げ
福耳の母と座りて虫を聞く
胸板の水鉄砲の的となる
立冬や和菓子の包み折り鶴に
逆立ちをひよいと妻決め春立ちぬ
鉛筆に森の…
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永峰久比古『句集 柏』(安楽城出版)より
2023.07.02
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平成23。
「馬酔木」同人。第1句集。
迎火を焚き続けきし母に焚く
枯るるもの枯れて磧の石叩
大寒の草の骨踏む別れかな
出願も受験も雪となりにけり
鳰潜き釣瓶落しの湖緊る
面影の母は老いざる手鞠唄
霧濡れの少女紙梳く…
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舘岡沙緻『句集 夏の雲』(角川書店)より
2023.06.25
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2011年。
「花暦」主宰。第5句集。
初句座の一つ足したる机かな
CT検査終へ汗のもの着用す
みづうみの風の涼しや柱背に
瞽女唄を一途に藍の秋袷
幼ナ手のゴム風船の飛びたがり
末枯るる学問の灯はひとりの灯
塵捨てに…
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山口超心鬼『句集 遠天』(牧羊社)より
2023.06.20
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平成1。
「天狼」同人。第2句集。
遠天に峰雲菩薩立ち給ふ
終に揃はず酔漢の踊の手
栗飯の栗は龍神村のもの
密教の山断崖に藤の房
試し打つ祭太鼓の皮の張り
櫓より降りて踊の輪に入れり
雲板を強打一山蝉時雨
病床に居ずま…
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石橋万寿『句集 飛天の笛』(ふらんす堂)より
2023.06.13
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2011年。
「狩」同人。第1句集。
買初めの本の匂ひを抱き戻る
折りあがる女雛を待てる男雛かな
花吹雪幌かけてゆく乳母車
風上へ合図野焼きの火を放つ
磯遊びせし夜の風呂にこぼれ砂
人波の上に真白き破魔矢かな
老いの…
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坂戸淳夫『句集 異形神』(騎の会)より
2023.06.07
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1999年。第7句集。
眼前の宙吊の蛇退きなさい
枯木山燃えぬ落日など要らぬ
とりあへず死んでみせたる火取蟲
斧打ちこむ死んでゆく木の餞に
揚雲雀そこならば病む友見えむ
そこに居ただけでにんげんが消えた 夏
手鞠うた…
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山崎治子『句集 たなごころ』(狩俳句会)より
2023.06.04
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昭和63。
「狩」同人。第1句集。
じやんけんの石ばかり出すちやんちやんこ
蝉の声減りゆく日々よ母訪はな
なぞなぞの父から母へ暖炉の夜
息かけて両手はげます紙漉女
肉片のごとく重なり落椿
子の籠を先に満たして蓬摘み
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宇多喜代子『句集 半島』(冬青社)より
2023.06.03
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1988年。第3句集。
石の家月光深きところまで
梟に熟睡のときのついに来ず
天に月地にありふれた流離譚
まつろわぬ者として負う花衣
長汀は死魚点々と夏の暮
長病みの手首は秋を知りつくし
逝く夏や芸人の大足をみて
か…
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やなせみわ『句集 南国』(狩俳句会)より
2023.05.28
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平成6。
「氷海」「狩」同人。第1句集。
凍蝶となるべく翅を畳みけり
天国の亡弟が凧ひつぱるよ
どんぐりの行方は知れず石畳
照りもみぢ水中からも照り返す
しばらくは亡き母とゐて日向ぼこ
曲るべきところは曲り恵方道
石…
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斎藤松亀子『句集 をんな』(琴座俳句会)より
2023.05.24
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昭和63。
「琴座」同人。第一句集。
抱かれゐる胸の広さよ夏の海
白梅の白きをもつて見合する
雪の朝子等に守られ子が生まる
針を持ち女に浸る桐の花
蝉時雨口のかたさで生き通す
隠れても抱きに来るなり青田風
人間の口よ…