《古書・古本の出張買取》 京都・全適堂 の日記
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大峯あきら『句集 紺碧の鐘』(牧羊社)より
2022.09.25
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昭和51。
「青」同人。第1句集。
讀み始め讀み終りたる夜長かな
緑蔭の蝶飛ぶほどの廣さかな
秋晴の土運ばれて来て匂ふ
フィヒテ全集鐡片のごと曝しけり
春暁やひつきりなきは赤子の香
赤んぼの溺れる乳房夜の牡丹
扁額へ…
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高道章『句集 海岸』(邑書林)より
2022.09.20
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2009年。
「運河」同人。第2句集。
梟の仏眼にして居眠れり
サングラス横顔なれば目玉見ゆ
天も地も正岡子規の忌なりけり
間違つて肩たたかれし春の暮
プールに入る聖母のごとく子を抱き
暮石の忌瓶を剥がれてラベル泛…
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中間一司『句集 すばる』(ふらんす堂)より
2022.09.19
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2022年。
俳人協会幹事。第1句集。
寒灯や高麗仏の胴細し
竹林を這ひくるにほひ雨水かな
白玉や店の奥より水の音
婆たちの余興となりし田植唄
朝涼や杉の丸太の晒されて
冬立つやセーラー服の二本線
見覚えのある冬帽子…
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日々野さき枝『句集 天馬』(狩俳句会)より
2022.09.16
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平成8。
「狩」「達矢」同人。
薄氷を踏みしだきつつ測量士
流れ寄るもの増やしつつ水温む
日も風も弾き返して花辛夷
穭田に突き立てられし売地札
遠山に日の退きて田草取
まだ恋を知らぬ指さき桜餅
白木蓮や鉄扉を閉ざす修…
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島田刀根夫『句集 青春』(邑書林)より
2022.09.10
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平成19。
無所属。第3句集。
櫻蕊掃いて新任教師かな
教師立ちあがりみな立つ花野かな
寒紅のひとりひとりに鏡あり
おでん屋のおやぢなかなか學ありて
亂すまじいま翡翠の水なれば
神官を涼しくしたる袴かな
防人を立たせ…
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鷲谷七菜子『句集 天鼓』(角川書店)より
2022.09.01
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平成3。
「南風」主宰。第5句集。
きたきつねたちまちけぶり樹氷林
喉ふかきところよりこゑ桜守
色鳥のあとかたもなし白磧
鹿の子のひとりあるきに草の雨
須弥壇のちりもとどめぬ大暑かな
秋風に神馬が放つ鼻ぶるひ
春眠の…
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山本直一『句集 鳥打帽』(編集工房ノア)より
2022.08.28
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2014年。
「船団」会員。第一句集。
鳥打帽ぬいで祭りだはちまきだ
楠の木を二人で抱いて天高し
屠蘇交す娘が父と呼ぶ人と
宮の春「産まれました」のよだれかけ
地に落ちし躑躅が躑躅見あげをり
耳垢のふえた気のする昼…
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『大橋敦子集(自註現代俳句シリーズⅡ期8)』(俳人協会)より
2022.08.21
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昭和61。
「雨月」主宰。
生れたるのみのふるさと盆の月
日の匂ひある子の髪を洗ひやる
枯木中落つる月のみ色持てる
虹に立つ少女直ぐなる髪垂らし
ちる花に撮られゐる笑みつくりをり
降る雪に楽器沈黙楽器店
噴水に光と風…
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鷲谷七菜子『句集 水韻』(ふらんす堂)より
2022.08.18
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1990年。
「南風」主宰。第5句集。
映し得ぬ身の内側や水澄みても
わが独語水に沈みて秋の蝉
極寒の瀧音ひびき土不踏
枯れきつて水の匂ひの芦となる
月光を得しより川の奔りそむ
影のごと人去りゆけり氷り瀧
川幅が余す…
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『橋本鶏二集(自註現代俳句シリーズⅠ期10)』(俳人協会)より
2022.08.13
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昭和53。
「年輪」主宰。
ふる雪や機械しづかに鐡を切る
水馬はじきとばして水堅し
瀧風に巫女のあそべる巌かな
鳥のうちの鷹に生れし汝かな
菊の前静かにたまる落葉かな
冬濤の摑みのぼれる巌かな
秋燕の羽をたたみてなが…