《古書・古本の出張買取》 京都・全適堂 の日記
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向井久子『句集 袋掛』(本阿弥書店)より
2023.05.10
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1989年。
「天塚」同人。「狩」会友。第一句集。
人の手に渡りし畑の梅咲けり
神留守の鈴大振りに拝みけり
石庭を見るにサングラスをはづし
草の葉にすがる空蝉念仏寺
み仏のしづけさにゐて蝉しぐれ
生業を持たぬ生涯団…
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花谷和子『句集 光りは空へ』(本阿弥書店)より
2023.05.06
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1993年。
「藍」主宰。第2句集。
夕鶴や祈り通すということを
宙という美しきもの雪舞えり
冬濤の真剣白刃われへ寄る
少年の拳銃の先紅椿
口上に負けて吉野の蓬餅
歳月をおもえば秋の一草も
秋蝶や舞い狂わねば日の熱し
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遠山陽子『句集 連音』(弦楽社)より
2023.05.02
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平成7。
煮凝や顔の平たき父と母
油照養蜂箱の内知らず
帰るべしこぼれざらしの山の栗
自転車の片足つけば春夕焼
音もなく垂れ母の日の鞦韆は
日焼いや坂道が嫌おかあさん
芥子坊主波なき海のおそろしき
角のある霰跳ねちる…
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安藤久美子『句集 只管』(ウエップ)より
2023.04.26
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2011年。
「やぶれ傘」同人。第一句集。
落椿土を咬むかに傾ぎけり
銀の匙金の匙もてメロン喰ぶ
緑蔭に影をあづけて放心す
たつぷりの風を吐きだす茂りかな
木枯らしの夜は酒強き人の輪に
クリスマスツリーへ開く自動ド…
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土屋義方『句集 春の女神』(文學の森)より
2023.04.23
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平成25。
「葡萄棚」編集長。第1句集。
春眠や枕頭におく薄荷飴
警策を受けて涼しくなりにけり
虻多してふ立て札に虻を見ず
蚤の市蚤のゐさうな古衣
日日掃いて日日新たなる落葉かな
三匹の子猫土管の口に啼き
ゴンドラの…
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橋本喜夫『句集 潜伏期』(書肆アルス)より
2023.04.18
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令和2。
「雪華」主宰。第二句集。
窓枠に嵌め殺されてゐる無月
死にたれば水のあかるき金魚玉
白障子神を見しものなかりけり
生きものはなべて孤独死梅ひらく
春愁や鳩は時計にひきこまる
春愁がブラックバスのごとくゐる
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瀬島酒望『句集 葷酒庵』(ウエップ)より
2023.04.15
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2019年。
「やぶれ傘」同人。第3句集。
わんわんと水子地蔵に蝉時雨
子に渡す父の揚げたる凧の糸
蝶風に逆らふやうな乗るやうな
気にすれば気になる音や冷蔵庫
風鈴の舌に大それたる言葉
靴先に冬日の当る電車かな
春眠…
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乕谷芳子『句集 氷室の桜』(文學の森)より
2023.04.06
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平成25。
「運河」同人。第1句集。
踊笠取れば涼しき目鼻立ち
抜刀の勇は土足菊人形
梅固し梅まつりの旗立ちたれど
白塗の楽屋まる見え村芝居
漁に出てゐたる舟屋に日脚伸ぶ
春愁や月光菩薩目蓋ふせ
轟ける瀑布に手摺持ち…
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龍野龍『句集 雪つぶて』(文學の森)より
2023.04.01
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令和2。
「浮野」編集長。第2句集。
雪降つてもののかたちを露はにす
手のひらに猫の子の腹立ててをり
校庭の面の広がり雷兆す
白木蓮や比叡を雨の上がりゆく
おほかたは水の重みの金魚買ふ
外套の重きを吊す父の部屋
押し…
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鳴門奈菜『句集 イブ』(琴座俳句会)より
2023.03.27
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昭和60。
春昼の白足袋歩く形に脱がれ
大空に大鳥居あり春の風
根っからの善人憎し葱坊主
にんげんを楽しんでいる薄氷
今年また蒔き忘れたる瓜の種
春の闇傷の手首をしたたりし