《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
-
酒井久美子『句集 絵本の海』(ふらんす堂)より
2024.03.21
-
2024年
「玉梓」同人
第1句集
冬日射まつすぐ生きよと父の声
火を追ふ火闇煌々とお山焼
生き急ぐなかれと伏すや春の風邪
お山焼炎太古の闇を駆く
落花頻り父を葬りし日のやうに
行く春や弥陀半眼に光るもの
げんげ田に心…
-
犬飼孝昌『句集 土』(菜の花会)より
2024.03.18
-
平成4
「菜の花」同人
第1句集
着膨れて肩で押すドアすぐしまる
村雪解ビニールハウスきらめける
月の夜の稲穂一粒毎見ゆる
悴む手ほぐし子の嘘聞きてをり
春愁の色鉛筆を鋭く削る
飛んでゐる限り華麗に秋揚羽
木の瘤にまろ…
-
伊藤政美『句集 二十代抄』(菜の花会)より
2024.03.14
-
平成25
「菜の花」主宰
第一句集『二十代』のリメイク
雨の中雨の走れる白雨かな
稲雀追われ隣の田に下りる
やわらかき肩とふれゆく秋祭
野を枯らし尽し凩人に吹く
燐寸擦るや夜の雪景動揺す
万緑へ柩軽々出て行けり
海明け…
-
片桐和子『句集 雪韻』(遊牧社)より
2024.03.10
-
1996年
「菜の花」同人
第1句集
ドア細く開けて雪ん子入れてやる
軒先につららが太る喪の家族
一戸づつ出てはかげろふ郵便夫
夕日射すすでに冷たき松の幹
夕立に打たれしものを全て脱ぐ
月が出るつらら太れるだけ太り
墓…
-
三宅みち子『句集 刺羽』(東京四季出版)より
2024.03.04
-
平成2
「運河」「春日野」同人
第1句集
猫通り犬通りゆく蕗の薹
風花のとび行けるもの消えしもの
月浴びてゐること知らず線路工
日輪の円の中にも雪降れり
薄氷を指で沈めて手を洗ふ
うららかや島の黒牛犬と寝て
長梅雨や犬…
-
山根啓作『句集 啓明』(朱雀俳句会)より
2024.03.01
-
平成24
「朱雀」同人
第1句集
右よしの左いせぢや風薫る
村小町踊りの背に団扇差し
掌の蛍に温みあるごとく
落日のさらけ出したる大枯野
ポケットの中に鳴り出す初電話
長老の一番乗りの寒稽古
牛蛙鳴き出し句座の盛り上が…
-
泉田秋硯『句集 二重唱』(文學の森)より
2024.02.22
-
2008年
「苑」主宰
第十句集
大袈裟に風を演出雪柳
備へてもいくさはするな武者幟
おおと呼ぶ禰宜のテノール山開
百層の窓の夕焼落伍なし
片蔭を刺客のごとく急ぐなり
榠櫨据ゑ一対一の黙くらべ
存分に鬼舞はせけり神の留…
-
永川絢子『句集 桧扇』(朝日新聞社)より
2024.02.18
-
1998年
「天狼」会友 「築港」同人
第1句集
乳母車押しだんじりの後につく
滝あつてその又上に行者滝
豆を蒔く高階の鬼逃げ場なし
福娘少し傾く金烏帽子
小児科に子の丈ほどの聖樹あり
時代祭式部と納言同乗す
売り声は上…
-
橋本多佳子『句集 信濃』(臼井書房)より
2024.02.15
-
昭和22
第2句集
野の藤はひくきより垂り吾に垂る
春月の明るさをいひ且つともす
硯洗ふ墨あをあをと流れけり
濤うちし音返りゆく障子かな
朝刊に日いつぱいや蜂あゆむ
冬の月明るきがまま門(と)を閉ざす
洋子生る
天の川…
-
柴崎加代子『句集 砂山』(ふらんす堂)より
2024.02.15
-
2010年
「狩」同人
第1句集
背泳を時には見せて鯉幟
向日葵の丈の止まらず休耕地
藍甕の藍の息づく土間の冷え
耳遠き父が捉へし初音かな
真つ先に犬駆け込めり避暑の荘
保育所に泣く子を預け休暇明け
新胡麻を砂金のごと…