《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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井原美鳥『句集 分度器』(文學の森)より
2024.02.13
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平成30
「握手」「沖」同人
第1句集
まんなかに母在る幸や雑煮吹く
花蜂の8の字飛びのビブラート
蚕豆を剥くもうひとり子の欲しき
亡き人の一語一語や龍の玉
カフカ読む秒針の音冴えて来し
父の日やオイルの…
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坂本和加子『句集 水辺』(北溟社)
2024.02.07
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平成13
「浮野」同人
第2句集
すぐとまるおもちやの汽車に冬の蝿
子育てを吾娘にあづかる蝶の昼
師を乗せてたくあん匂ふ愛車かな
蝶の昼ボタン摑みて寝に就く子
ハンドルを野に向け月に向けてをり
病気にも恋にも無縁夏帽…
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北川あい沙『句集 風鈴』(角川マガジンズ)より
2024.02.03
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平成23
無所属
第1句集
春の野を子供は転ぶまで走る
空色の目をしてしやぼん玉を吹く
ひとの声してをり朝寝してゐたる
木蓮の版画のやうに咲いてをり
春風のそよいで人の居ない部屋
父の日のみづうみを見て帰りけり
蛇の棲…
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千鳥由貴『句集 巣立鳥』(ふらんす堂)より
2024.01.30
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2023年
「香羽」同人
第1句集
身ごもれることなど知らず磯遊
小説にならぬ人生苔の花
歳月はここにも流れ蝉の穴
風鈴をすべて鳴らしてひとつ買ふ
木には木の言葉のありて木の実降る
育児書に引く傍線や明易し
夢でなほ吾…
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柳井梗恒子『句集 面晤』(邑書林)より
2024.01.29
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2006年
「幡」会員
第1句集
汁椀をおきて黙祷原爆忌
つぶらなる眼の蓑蟲と出会ひたり
泥の中高野聖の足掻きゐる
麥埃腕にはりつく眞晝かな
空中庭園借景は雲の峰
娘生れたり数へ日のそのひと日
井伏鱒二逝く
はんざきや黑…
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名和直子『句集 月の浪』(東京四季出版)より
2024.01.22
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平成23
「浮寝鳥」同人
第1句集
例年の茸狩り誘ふ母の文
挿木より育てし乙女椿かな
念入りに手鏡ふきて業平忌
麩まんぢゅう届き新茶の封を切る
鳰の子の波のひかりに紛れけり
柿を選る婆一疊の日の筵
十夜鉦とゞめの一打あ…
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阪脇文雄『句集 鉤引』(文學の森)より
2024.01.15
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平成17
「運河」「三重俳句」同人
第2句集
厚さ増す妻のカルテや春寒し
耕せり枯野の端を捲るごと
山国に暮らせば寡黙冬木立
涅槃図の嘆きの外にゐて嘆く
蟋蟀の黒目に見つめられゐたる
訃を知らす硬貨の冷えをにぎりしめ
…
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辻田克己『句集 ナルキソス』(ふらんす堂)より
2024.01.15
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2007年
「幡」主宰
第8句集
雪消えて森や林や田や畠
教育大構内(キャンパス)にあり蝌蚪の国
筆立にぎしと団扇も挿してあり
虫売の目の高さまで子は跼む
しぐるるや都大路は昆布の艶
風邪の子に鶴折つてやる薬包紙
マス…
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飯田龍太『句集 山の木』(立風書房)より
2024.01.09
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昭和50
「雲母」主宰
第6句集
冬深し手に乗る禽の夢を見て
茶の花の映りて水の澄む日かな
凍雪を踏みてこころの花模様
子燕が育つ雲雀の声のなか
花びらを重ねて寒の菊にほふ
かたつむり甲斐も信濃も雨のなか
鱒池の隅に手…
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西脇妙子『句集 花筏』(六甲出版)より
2024.01.03
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平成8
「風」「雉」同人
第1句集
秋の蝶吹かれて川を渡りきる
冬牡丹くづれて菰の広さかな
鬼追ひを瓦の鬼が見下ろせり
月食に傷舐めてをり恋の猫
酒倉の裏春泥の深轍
筍(たかんな)を一夜ねかせし土間濡るる
歩くより早く…