《古書・古本の出張買取》 京都・全適堂 の日記
-
山口超心鬼『句集 遠天』(牧羊社)より
2023.06.20
-
平成1。
「天狼」同人。第2句集。
遠天に峰雲菩薩立ち給ふ
終に揃はず酔漢の踊の手
栗飯の栗は龍神村のもの
密教の山断崖に藤の房
試し打つ祭太鼓の皮の張り
櫓より降りて踊の輪に入れり
雲板を強打一山蝉時雨
病床に居ずま…
-
石橋万寿『句集 飛天の笛』(ふらんす堂)より
2023.06.13
-
2011年。
「狩」同人。第1句集。
買初めの本の匂ひを抱き戻る
折りあがる女雛を待てる男雛かな
花吹雪幌かけてゆく乳母車
風上へ合図野焼きの火を放つ
磯遊びせし夜の風呂にこぼれ砂
人波の上に真白き破魔矢かな
老いの…
-
坂戸淳夫『句集 異形神』(騎の会)より
2023.06.07
-
1999年。第7句集。
眼前の宙吊の蛇退きなさい
枯木山燃えぬ落日など要らぬ
とりあへず死んでみせたる火取蟲
斧打ちこむ死んでゆく木の餞に
揚雲雀そこならば病む友見えむ
そこに居ただけでにんげんが消えた 夏
手鞠うた…
-
山崎治子『句集 たなごころ』(狩俳句会)より
2023.06.04
-
昭和63。
「狩」同人。第1句集。
じやんけんの石ばかり出すちやんちやんこ
蝉の声減りゆく日々よ母訪はな
なぞなぞの父から母へ暖炉の夜
息かけて両手はげます紙漉女
肉片のごとく重なり落椿
子の籠を先に満たして蓬摘み
…
-
宇多喜代子『句集 半島』(冬青社)より
2023.06.03
-
1988年。第3句集。
石の家月光深きところまで
梟に熟睡のときのついに来ず
天に月地にありふれた流離譚
まつろわぬ者として負う花衣
長汀は死魚点々と夏の暮
長病みの手首は秋を知りつくし
逝く夏や芸人の大足をみて
か…
-
やなせみわ『句集 南国』(狩俳句会)より
2023.05.28
-
平成6。
「氷海」「狩」同人。第1句集。
凍蝶となるべく翅を畳みけり
天国の亡弟が凧ひつぱるよ
どんぐりの行方は知れず石畳
照りもみぢ水中からも照り返す
しばらくは亡き母とゐて日向ぼこ
曲るべきところは曲り恵方道
石…
-
斎藤松亀子『句集 をんな』(琴座俳句会)より
2023.05.24
-
昭和63。
「琴座」同人。第一句集。
抱かれゐる胸の広さよ夏の海
白梅の白きをもつて見合する
雪の朝子等に守られ子が生まる
針を持ち女に浸る桐の花
蝉時雨口のかたさで生き通す
隠れても抱きに来るなり青田風
人間の口よ…
-
「春野三十周年合同句集 さゞなみ」(春野発行所)より
2023.05.19
-
令和5。
雨だれといふあかときの春のおと 黛執
尼寺の猫が恋して家出して 渕上雅子
草餅の草よりも濃く仕上がりぬ 佐藤幸子
ふらここを漕ぐ青空の真ん中へ 岡庭正
春の木となるたつぷり濡れながら 片倉映子
眠さうに主出てくる…
-
徳山弓街『句集 金幣』(牧羊社)より
2023.05.16
-
平成3。
「天狼」同人。第一句集。
ナイターの光電車の中で受く
風車風ごと吾子の手に渡す
黒揚羽地に張りつける原爆忌
灯台の雪着く側を背と思ふ
結界の稲田は僧の手にて刈る
海女の小屋蟹は自由に出入する
金的が一矢で揚…
-
『金子敦句集 現代俳句文庫88』(ふらんす堂)より
2023.05.10
-
2023年。
「出航」同人。
聖夜なり伝言板の感嘆符
鳩発ちて道あらはるる初詣
コピーまだ終はらず虹の薄れゆく
黙読のまなこの動く春の雪
もう来ないかもマフラーを巻き直す
猫の尾のしなやかに月打ちにけり
落花浴ぶ明日…