《古書・古本の出張買取》 京都・全適堂 の日記
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片桐和子『句集 雪韻』(遊牧社)より
2024.03.10
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1996年
「菜の花」同人
第1句集
ドア細く開けて雪ん子入れてやる
軒先につららが太る喪の家族
一戸づつ出てはかげろふ郵便夫
夕日射すすでに冷たき松の幹
夕立に打たれしものを全て脱ぐ
月が出るつらら太れるだけ太り
墓…
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三宅みち子『句集 刺羽』(東京四季出版)より
2024.03.04
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平成2
「運河」「春日野」同人
第1句集
猫通り犬通りゆく蕗の薹
風花のとび行けるもの消えしもの
月浴びてゐること知らず線路工
日輪の円の中にも雪降れり
薄氷を指で沈めて手を洗ふ
うららかや島の黒牛犬と寝て
長梅雨や犬…
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山根啓作『句集 啓明』(朱雀俳句会)より
2024.03.01
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平成24
「朱雀」同人
第1句集
右よしの左いせぢや風薫る
村小町踊りの背に団扇差し
掌の蛍に温みあるごとく
落日のさらけ出したる大枯野
ポケットの中に鳴り出す初電話
長老の一番乗りの寒稽古
牛蛙鳴き出し句座の盛り上が…
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泉田秋硯『句集 二重唱』(文學の森)より
2024.02.22
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2008年
「苑」主宰
第十句集
大袈裟に風を演出雪柳
備へてもいくさはするな武者幟
おおと呼ぶ禰宜のテノール山開
百層の窓の夕焼落伍なし
片蔭を刺客のごとく急ぐなり
榠櫨据ゑ一対一の黙くらべ
存分に鬼舞はせけり神の留…
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永川絢子『句集 桧扇』(朝日新聞社)より
2024.02.18
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1998年
「天狼」会友 「築港」同人
第1句集
乳母車押しだんじりの後につく
滝あつてその又上に行者滝
豆を蒔く高階の鬼逃げ場なし
福娘少し傾く金烏帽子
小児科に子の丈ほどの聖樹あり
時代祭式部と納言同乗す
売り声は上…
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橋本多佳子『句集 信濃』(臼井書房)より
2024.02.15
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昭和22
第2句集
野の藤はひくきより垂り吾に垂る
春月の明るさをいひ且つともす
硯洗ふ墨あをあをと流れけり
濤うちし音返りゆく障子かな
朝刊に日いつぱいや蜂あゆむ
冬の月明るきがまま門(と)を閉ざす
洋子生る
天の川…
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柴崎加代子『句集 砂山』(ふらんす堂)より
2024.02.15
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2010年
「狩」同人
第1句集
背泳を時には見せて鯉幟
向日葵の丈の止まらず休耕地
藍甕の藍の息づく土間の冷え
耳遠き父が捉へし初音かな
真つ先に犬駆け込めり避暑の荘
保育所に泣く子を預け休暇明け
新胡麻を砂金のごと…
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井原美鳥『句集 分度器』(文學の森)より
2024.02.13
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平成30
「握手」「沖」同人
第1句集
まんなかに母在る幸や雑煮吹く
花蜂の8の字飛びのビブラート
蚕豆を剥くもうひとり子の欲しき
亡き人の一語一語や龍の玉
カフカ読む秒針の音冴えて来し
父の日やオイルの…
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坂本和加子『句集 水辺』(北溟社)
2024.02.07
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平成13
「浮野」同人
第2句集
すぐとまるおもちやの汽車に冬の蝿
子育てを吾娘にあづかる蝶の昼
師を乗せてたくあん匂ふ愛車かな
蝶の昼ボタン摑みて寝に就く子
ハンドルを野に向け月に向けてをり
病気にも恋にも無縁夏帽…
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北川あい沙『句集 風鈴』(角川マガジンズ)より
2024.02.03
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平成23
無所属
第1句集
春の野を子供は転ぶまで走る
空色の目をしてしやぼん玉を吹く
ひとの声してをり朝寝してゐたる
木蓮の版画のやうに咲いてをり
春風のそよいで人の居ない部屋
父の日のみづうみを見て帰りけり
蛇の棲…